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国見岳初日の出登山(2013年12月30日〜2014年1月2日) → 写真集


約1年ぶりのHP更新です。

年末が近づき初日の出をどこで拝もうか考えていて、「山池」湿原やヘラノキ平のあの雪景色が懐かしくよみがえってきた。昨年は国見岳へ初日の出登山を決行したのだが、山頂まで行かずに「山池」湿原で一泊して引き返してしまった。それ以来、なぜかHPを全く更新していない。よし、2014年はもう一度あそこから仕切りなおすか。

昨年は、椎葉の雷坂をしゃくなげ峠まで登り、山池登山口までは門割林道を通って、なんとか日が暮れる前に「山池」湿原に着くことができた。今回はもう少し国見岳山頂に近付いておきたいので、2泊、あるいは3泊を想定して準備を始めた。一泊目はヘラノキ平辺り、二泊目は力水の所にテントを張りたい。


登山コース

1日目:雷坂登山口 - しゃくなげ峠(門割林道) - ヘラノキ平(一泊目)
2日目:ヘラノキ平 - 「山池」湿原 - 杉の木谷登山道分岐(二泊目)
3日目:杉の木谷登山道分岐 - 国見岳山頂 - 杉の木谷登山道分岐(三泊目)
4日目:杉の木谷登山道分岐 - 「山池」湿原 - 山池登山口 - (門割林道) - しゃくなげ峠 - 雷坂登山口

MAP

前日:椎葉へ


 29日の午前中に福岡を立ち、途中から高速に乗って松橋ICで降りる。松橋からは国道218号線を東へ向かい、まずは、内大臣林道の様子を見に行く。あわよくば広河原登山道を登ろうと企てたのだが、内大臣林道の入り口には相変わらず工事の看板が幾つか立っていて、3km先で崩落の為通行止めの表示がある。無視して少し進んでみたが、路面の状況は非常に悪く、年老いたRAV4にはちょっと酷な気がしたので、早々にあきらめて予定通り椎葉へ向かうことにした。

国道265号線を南下して国見トンネルを抜ける。今のところ雪の気配はなく、路面凍結の心配もなさそうだ。日向椎葉湖の北岸沿いに進み、上福良橋、不土野橋と渡って耳川の右岸を北上する。左に椎葉−五家荘線を見送り尾前の集落を抜けると、上の小屋谷を渡った所に一軒の廃屋がある。雷坂登山口はこの廃屋の横にある。廃屋の手前のスペースに車を停めて、今日はここで車中泊だ。

(写真:雷坂登山口の駐車ポイント)


1日目:雷坂を登ってヘラノキ平へ
雷坂登山口 → 上の小屋谷分岐 → しゃくなげ峠(門割林道) → ヘラノキ平

 昨夜は沢山着込んで寝たら暑くて目が覚めるほどであった。山深い所なので勘違いしそうであるが、雷坂登山口がある場所は標高600m程でそれほど高い所ではない。それに今日は割と暖かいようだ。天気は曇っているが、これ以上崩れることはなさそうだ。

今回も、昨年同様明るくなってから出発する。雷坂の登山口は廃屋のすぐ横にあり、荒れた小谷を登って行く。登山口には赤テープ以外にこれといった表示は無い。荒れた窪みを登って、左の竹林を突破すると尾根の鞍部に出る。おそらく、尾根へ出る本来の道がどこかにあったのだろうが、倒木や竹藪に隠れてしまったのだろう。登山口からこの鞍部までがこのコース最大の難所である。鞍部から尾根を北へ向かい、荒れた竹林を抜けると登山道は少し広くなる。これが、雷坂本来の姿なのだ。雷坂登山道は古い交易路を利用しており、斜面をトラバースしてはジグザグに登って尾根へ上り、の繰り返しで傾斜も比較的緩やかである。

まずは、門割林道のしゃくなげ峠を目指して登って行く。距離にして約6.5km、標高差は約900mであるが、多少のアップダウンがあるので累積標高は1000mを越える。中間地点あたりで上の小屋谷へ降る尾根が派生していて、その尾根の方へ道が分岐している。この道は主に沢登りの人たちが使用しているようだ。前回はその分岐点で昼飯休憩にしたが、今日もおそらくそうなるだろう。上の小屋谷分岐までは植林帯の道が続くので、前回このコースを登った時に記録しておいた特徴的なポイントを一箇所ずつ辿って行く。順番に挙げると、大岩、アンテナ、山の神、倒木の根、窪地の尾根、崩壊地、植林帯の谷等である。

最初のポイントは大岩であるが、林の中の斜面を折り返しながら緩やかに登って行くと枝尾根を回り込むあたりで登山道の左側に大きな岩が聳えている。この岩の反対側は絶壁になっているようで横から見ると切れ落ちている。この岩の所で尾根を回り込むと正面が少し開けて上の小屋谷分岐辺りから谷へ降る尾根が見える。さらに、斜面を横切って少し進むと谷の奥には、おそらく五勇山辺りであろうか、樹氷で白くなった山が見える。

急斜面をジグザグに登り尾根に出ると、ぽっきりと折れた松の木の下に放置されたテレビアンテナがある。今はどうか知らないが、昔、谷間の集落ではテレビの電波を受信できないので尾根にアンテナを立ててそこからケーブルを引いていた。その名残りだろう、下の方で登山道沿いに時々黒いケーブルが這っているのを見かけた。アンテナのあるところは平坦になっているので休憩するのによい。ここから登山道はP858の東側を巻いて行く。雷坂の登山道は大部分が尾根の西側を通っているが、ここの部分は東側を通っていて木の間越しに耳川の対岸の山並が見え隠れする。

P858を回り込んで再び尾根に合流すると右側から突き出た松の木の根元に、山の神様だろうか、何か祀って酒などをお供えしてある。松の木の後ろには岩が積み重なっていて、神様の正体は松の木なのか岩なのか分からない。とりあえず、安全に登山できるようにお願いして先を急ぐ。登山道にはうっすらと雪が残っているが、まだ、地面が隠れるほどではない。

次のポイントは倒木の根が登山道を隠していて一瞬戸惑う場所だ。落ち葉が積もっていたり、雪が積もっているときは分かりにくいが、登山道は木の根を越えて先へ延びている。一旦、平坦な尾根へ出ると植林帯をジグザグに登って行くが、このあたりでうっすらと積もった雪の上に点々と犬の足跡が付いているのを見つけた。一緒に人の靴跡もついているが今日のものではなさそうだ。この時は、多分、犬を連れて誰かが歩いたのであろうと気に留めなかったのだが。。。

この先にもう一箇所平坦な尾根に出るところがある。そこは地形に特徴があるので記憶に残っているのだが、尾根の反対側が浅い窪地になっているのだ。緩やかに傾斜しているので、おそらく、窪地の端から谷が降っているのであろう。今日、この窪地は雪に埋もれていた。ここからは一旦ジグザグに登った後、P1154(地図には「雷坂」の表記がある)の南西側をトラバースして行く。

杉林の中の道は、おそらく本来の道が通れなくなって枝道を作ったのだろう、時折分岐らしき跡があるので注意が必要だ。また、ところどころ崩れて狭くなっているところがあるので足元に注意を払いながら歩く。特にP1281(「がっかり」という名が付けられているようだ)の南斜面をトラバースする所には危険な崩壊地が2箇所ある。重いザックを背負ってここを通過するのはかなり緊張する。崩壊地をクリアすると植林帯の谷に突き当たる。本来の道は右からジグザグに登って谷の上部を横切って進むのだが、そのまま、左へ谷を横切り尾根を登って登山道へ出ることもできる。今回は登りは前者を、降りは後者を通ってみた。

左の林の向こうに、扇山だろうか、山並が見えるとすぐに南へ派生する尾根に合流する。ここは上の小屋谷への分岐点になっていて赤いテープに「雷坂登山口」と「上の小屋谷分岐」の表示がある。上の小屋谷方面への踏み跡には木の枝で通行止めの印がしてある。前回はここで昼飯休憩にしたが、今日もここで休憩することにする。シートを広げ、パンとココアで簡単に昼飯を済ませていると何処からともなく犬が現れて、雪の上に転がって体をすりつけながらゴロゴロしだした。茶色の結構大きな犬だ。びっくりして身構えていると、もう一匹白い犬が現れ、こちらを警戒しながら登山道を先の方へ歩いて行く。こちらは最初に現れた方より若いように見える。両方とも首輪を付けているので誰か人がいるのかと思ってしばらく様子を見ていたが人が現れる気配はない。ゆっくりしていられないのでがんばってなんとか追い払うと、2匹とも上の小屋谷方面へ消えて行った。全く冷や汗ものである。急いで準備をして上の小屋谷分岐を後にする。

上の小屋谷分岐からしゃくなげ峠までは尾根を北西へ辿る。分岐からジグザグに登って尾根上に出ると尾根のすぐ西側を緩やかに登って行く。1400m辺りまで登ると今度は緩やかな降りになり、その後再び三角点「雷」に向かって登って行く。最後は三角点「雷」のピークの南側を降り気味に進んで門割林道に出る。しゃくなげ峠は門割林道が雷坂の尾根を越えるところで、切り通しになっている。上の小屋谷分岐からしゃくなげ峠までは距離にして約2km、標高差約200mであるが、このころになるとかなり疲れも出てきて、途中に降る区間もあったりで結構長く感じる。しかし、この区間は自然林の尾根で、西側には国見岳や小国見岳が木の間越しに見える。また、鞍部では尾根の反対側に霧立越の山並も見ることができる。しかし、今日はそれらの景色も目に入らないようなハプニングが発生した。

上の小屋谷分岐を出発すると雪も次第に深くなってきた。歩き始めてしばらくすると、靴のかかとを蹴りあげるたびに何かあたる感じがする。後ろを振り向くと、さっき出会った犬が私の太ももにピタッと顔を寄せて歩いている。茶色の方だ。まさに、びっくり仰天である。追い払っても、また、いつの間にか後ろにピタッとついて来る。白い方がこちらを警戒しながら脇をすり抜けて先の方へ行くと、様子を見に追いかけて行くが、私の姿が見えなくなるとまた戻ってきて後ろにくっついて歩く。そういう風に訓練されているのだろうか。結局、しゃくなげ峠までこの繰り返しで2匹の犬と歩く羽目になった。それにしても、この2匹は全く吠えない。追い払うためにストックを振り上げて殴る真似をしても、牙をむいて威嚇するような表情は一切しないし、唸り声一つ発さないのだ。

しゃくなげ峠に着くと茶色の方が雪の中に丸い窪みを作ってその中に丸まって休もうとするが、私が休憩する気配を見せないと今度は2匹で林道を山池登山口方面へ歩いて行った。このままついて来られても餌もやれないので、姿が見えないうちに林道からヘラノキ平方面への登山道をそっと登って行く。登山道は「国見岳鳥獣保護区区域図」の白い立て看板の横から斜めに登っている。尾根に上がると雪はさらに深くなってきた。明るいうちにテントを張りたいのでがんばって歩いていると、また、靴のかかとに何かがあたる感じがする。まさか・・・と思いながら後ろを見るとやっぱりいた。どうやらこいつらを撒くことはできないようだ。登山道はP1566の東側を巻いて行くが、このあたりは30cm以上積もっていて、吹き溜まりになっているところは膝まで潜ってしまう程だ。途中何度も雪の中に窪みを作って休もうとするしぐさを見せるが、私が無視して先へ進むとまたついてくる。P1566を巻き終わった辺りは広い平坦な尾根になっている。この辺りは「ヘラノキ平」という名前が付いていて、広い樹林帯の素敵な場所だ。今日は予定通りここでテントを張ることにする。

餌をねだっているのだろうか、じゃれついてくる犬たちをけん制しながらテントを張る場所を整地して、なんとかテントを張り終えたのは午後5時過ぎであった。犬は戻って行く気配もなく、テントの横と少し離れた所で雪の中に作った窪みに丸まっている。やる餌もないので、腹が減れば帰って行くだろうと思い、テントの中で夕飯を済ませて早々と眠りにつく。

(写真:しゃくなげ峠からヘラノキ平方面への登り口)


2日目:ヘラノキ平から国見岳へ
ヘラノキ平 → 「山池」湿原 → 杉の木谷分岐付近

 今日はゆっくり出発するつもりでテントの中でぐずぐずしていると、奴らが外を走り回り時々テントにぶつかってくる。どうやら帰らずに雪の中で一夜を過ごしたようだ。あげられるものとしてはソーセージか缶詰くらいしかないのだが、あの体格では少しあげたくらいでは満足しないだろう。餌をくれると思われてもこの後厄介だと思い、無視して朝食を済ませテントの外に出ると立ちあがってじゃれついてくる。昨日はあれほど警戒していた白い方も警戒心が解けたのか一緒にじゃれついてくるからたまったものではない。犬の扱いなど一切分からないので戸惑ってしまう。それにしても、雪の中で夜を明かし、昨日、私と出会ってからは何も食べていないはずなのに元気なものである。しかし、このままついてこられても飢えさせるだけなので追い返そうと決心し、ストックを振り回したり、木の枝を投げたりすると、私の豹変ぶりに戸惑っているようで少し距離を置いてこちらの様子をうかがっている。雪の中を走りながら追いかけると、白いほうが先にあきらめたのか、登山道を引き返し始めた。茶がその後を追って行ったのでホッとしていると、すぐにこちらへ戻ってくる。しばらくの間、私とにらみ合いが続き、その後、諦めたように登山道を戻って行くのだが、私がテントへ戻ろうとするとまた引き返してくる。にらみ合っている間も、牙をむいたり、唸り声を出したりは一切せず、こちらの真意を窺がうかのようにジッと見つめてくるのだ。行っては戻りを4、5回繰り返した後、やっとあきらめたように登山道をしゃくなげ峠の方へ帰って行った。姿が見えなくなるまで見送ってテントへ戻りながら、なんだか寂しくなり泣きそうになる。。。

もともとゆっくり出発するつもりだったが、犬を追い返すのにかなりの時間と労力をかけ、テントを撤収して出発したのは11時過ぎであった。ヘラノキ平は広い樹林帯の尾根で、ところどころに巨木も見られるとても雰囲気の良い場所である。木々の間は一面雪で埋まり、枝にはうっすらと霧氷が出来ている。時折陽が射すと雪の上に美しいシルエットが描かれる。雪はいよいよ深くなり、足を踏み出すと一旦足首辺りで止まり、体重をかけるとズボッとふくらはぎ辺りまで沈み込むので、結構体力を奪われる。根元が瘤だらけの木や、大きな倒木など、昨年の記憶を頼りにルートを見極めながら進んで行く。広い樹林帯を抜けると尾根の西側を巻いてP1575から南東へ降ってくる痩せ尾根を登って行く。歩いている間も奴らが戻ってこないか終始後ろが気になる。

P1575へ向かって尾根を真っすぐ登って行く。本来の登山道は1550m付近でピークの東側を巻いて展望岩の方へ進んで行く。しかし、今日はこのままピークを越えて反対側の高岳と国見岳を結ぶ縦走路へ出ようと思う。本当はピークの西側を巻いて直接「山池」湿原へ向かいたいのだがちょっと地形を判断する自信がない。雪は益々深くなり、辺りの木々は霧氷を付けて極寒の景色へと変わってきた。ピークから降った所には国見岳と高岳を結ぶ登山道が通っているはずだが、このあたりは地形が複雑で方向感覚が狂いそうになる。北へ降る尾根に入りこまないように注意しながら「山池」湿原の標識を目指す。尾根を西へ辿り、左下の窪地へ降ると林の中に見覚えのある標識が立っている。「山池」湿原の表示と門割林道へ降る方向を示す道標である。この標識のある場所に立つと方向感覚が修正できてこれから向かうべき方向がはっきりしてくる。

「山池」湿原は樹氷と雪に覆われているが、風もなく静かで、とても素敵な場所だ。昨年来た時よりも雪は多そうである。太陽の光で雪の上に描かれる木々のシルエットが好きなのだが、あいにく空はガスがかかっているのか曇っていて陽が射さない。しばらく辺りの景色を眺めながら休憩してから国見岳山頂方面へ向かう。「山池」湿原の出口辺りにも道標が立っている。最初はピークの北側をトラバースして行く。場所によってはズボッといくので、雪の表面を観察しながらなるべく歩きやすそうな所を探して進もうとするがうまくいかない。盛り上がっている所には倒木があるようで、その前後は雪が深い上に柔らかいのでひざぐらいまでもぐり込んでしまう。体重をかけても沈み込まない所やズボッと沈み込む所があって調子が狂う。もう少し雪が締まっていれば快適に歩けるのだが。。。

しかし、樹林帯の広い尾根が一面雪に覆われていてどこでも歩き放題なのは気分がいいものである。スノーシューがあればもっと快適に歩けそうだが、そんなしゃれたものは持っていない。何十年も使っていないワカンは縄が古くなっているので今回は持ってこなかった。また、今回の登山に合わせて靴とアイゼンを新調した。靴は防水性が高くなかなか調子いいが、アイゼンの出番はなさそうだ。

今日の目標は「力水」辺りを想定していたのだが、この調子ではとても辿りつけそうにない。結局、午後5時をタイムリミットにして辿りついたところでテントを張ることにした。尾根が平坦なのでテントを張る場所には事欠かない。テントを張り終えてGPSで場所を確認すると、杉の木谷登山道が合流する少し手前の標高1500m〜1550mあたりのようだ。

今日は2013年大晦日。持ってきた日本酒とフリーズドライフードの山菜蕎麦で最後の食事だ。ここまでの行程を思い返しながら、明日の晴天と、犬たちが無事に降りられることを願いながら眠りにつく。。。

(写真:表:ヘラノキ平でテント泊 裏:「山池」湿原)


3日目:国見岳山頂往復
杉の木谷分岐付近 → 国見岳山頂 → 杉の木谷分岐付近

新年明けましておめでとうございます。
今年最初の山歩きは暗闇の中を国見岳山頂へ向かっております。かなり雪が深いです。

昨夜、ヘッドランプの電源をを切らずに寝てしまうというドジを踏んでしまい、明るくなるまで電池がもつか心配しながら雪の尾根をうろついている。いまさらながらだが、暗闇で電池を交換するには別の明かりがいることに気付いた。次からはミニペンライトでも持ってこようと反省する。

登山道は杉の木谷登山道が合流する辺りから南へ方向を変えて、長谷登山道の分岐がある尾根を越え力水へ向かうのだが、雪で覆われて登山道がどこを通っているのかわからない。また、ヘッドランプの明かりだけでは杉の木谷登山道の合流地点も確認できないし、目印のテープも見つけられない。途中で何か変だと思ってGPSで確認すると、知らない間に尾根の斜面をトラバース気味に南の長谷登山道分岐あたりへ向かっている。しかし、このまま進むと谷に突き当たるので、西へ方向転換して一旦尾根へ上ることにする。

距離は短いが急な斜面を膝までの雪をラッセルしながら登って行くのは時間がかかる。なんとか尾根に上がったが地形がよくわからないので、力水経由はあきらめてこのまま尾根を直登することにした。尾根を外さないように登って行くが、思ったよりも時間がかかり、日の出に間に合うか心配だ。木の間から東の空が明るくなってきたのが見える。もうそろそろ山頂が近いはずだ。気は焦るが、この尾根を直登したことは無いのでどのあたりに居るのかわからない。これ以上高い所がないというところまで登ってきて回りを見渡しても山頂らしき所は見えない。不安にかられるが、近くのコブに上がって辺りを見回すと樹氷の林の向こうに見覚えのある祠が見えた。時刻は7時20分、辺りの様子を探っているうちに、いつの間にかガスの中に太陽が見え隠れしている。どうやら初日の出には間に合わなかったようだ。残念だが、この状況では山頂からはガスで何も見えなかっただろうと自分を慰めながら、とりあえずガスに隠れようとしている太陽に手を合わせる。

初日の出には間に合わなかったが山頂は踏んでおきたい。雪をかぶったしゃくなげの群落帯をなんとか突破して平家山や広河原登山口への分岐を確認すると、最後は岩場を登って国見岳山頂に到着だ。山頂の祠は霧氷で覆われ、白い衣をまとっているようだ。山頂からの景色はガスで見通しが利かない。わずかに登って来た方の尾根が少し見えている。昨夜トイレに起きた時には星空が綺麗だったので期待していたのだが、やはり明け方はガスがかかってしまうようだ。山頂の反対側からは樅木や五勇山方面からの登山道が登ってきているが、そちら側に靴跡が付いている。まだ新しいのでひょっとしたら少し前に誰か登ってきたのかもしれない。一瞬でも初日の出は見れただろうか。。。

この時までは、今日下山するつもりだったので早々に山頂を後にしてテントへ引き返す。山頂の北北西の平家山方面と高岳方面へ尾根が分岐する辺りは木がまばらに生えていて雪の尾根が広がっている。時折、ガスが晴れて青空がのぞくと樹氷に覆われた木々が輝いて見える。無事にテントへ帰りつけるか心配しながらもついつい写真を撮る為に立ち止まることが多い。もっとも、登って来た時の足跡を辿ればいいので迷うことは無いのだが。途中で杉の木谷登山口への標識を確認して、無事テントへ帰りつくことができた。やはり杉の木谷登山道が合流する辺りにテントを張っていたようだ。それにしても登りの1/3程の時間で降ってくることができた。もっとも、登りに時間をかけ過ぎていたのだが。。。

時刻は9時を回っている。昨年はこのくらいの時間に「山池」湿原からヘラノキ平経由で下山して午後3時半ごろに登山口へ帰りついたのだった。昨日「山池」湿原からここまで2時間ちょっとかかっている。アップダウンの少ない平坦な尾根なので逆コースもあまり変わらないだろう。今から出れば登山口に着くのは夕方になる。よし、もう一泊しよう。

「山池」湿原まで移動することも考えたがテントを撤収するのも面倒なので、結局、ここでそのままもう一泊することにした。いずれにしても水が残り少ないので水づくりをしなければならない。午前中は水を作る作業に当てることにした。なるべく綺麗そうな雪をかき集めてきてジェットボイルで溶かしていく。ジェットボイルは寒冷地に弱いのか結構時間がかかる。雪にはゴミが含まれているので浮いて来たものはスプーンですくい取り、残りは底に沈むのを待ってから上の綺麗な部分をポリタンへ移す。その作業を何回か繰り返して4L程の水を確保できた。これで明日の分までなんとかなるだろう。

朝早かったので眠気が襲ってきて午後は寝正月を決め込む。テントの中に寝転がっていると防寒着を着ていても寒くて熟睡は出来ない。時折、陽が射しているようだが外へ出るのも億劫だ。うとうとしながら時間を潰す。夕方、外へ出てみると林の中に陽が射しこんでいるが、太陽は尾根の向こうへ隠れようとしているところだった。あわてて何枚か写真を撮ってから夕食の準備をする。予備の食料をかき集め明日の朝と昼の分を確保して、残ったものでなんとか夕食にありつく。

この日の夜は、シュラフの口元から冷気が入り込んでなかなか眠れなかった。このあたりも今後の課題だ。。。

(写真:表:元旦の国見岳山頂 裏:初日の出らしきもの)


4日目:下山
杉の木谷分岐 → 「山池」湿原 → 山池登山口 → (門割林道) → しゃくなげ峠 → 雷坂登山口

2014年1月2日。今日は何としても下山しなければならない。

天気は上々。樹間から朝日が差し込んでくる。テントを撤収して7時45分に出発。まずは、「山池」湿原を目指す。一昨日歩いた足跡を逆に辿って行く。登山道は平坦な尾根の北側を通っていて時々赤テープを見かける。足跡は登山道からそれほどそれてはいないようだ。結構ジグザグに歩いているのは雪面を見ながら歩きやすそうなところを選んで歩いたからだろう。雪の上には私の以外に何種類かの動物の足跡が見られる。彼らの足跡がないか注意を払いながら歩いたが犬の足跡は見かけなかった。林の中に陽光が差し込むと雪に陰影がついてとても綺麗だ。上を見上げると霧氷をつけた木々が青空に向かって延びている。

1時間少々で「山池」湿原に到着。ここでも、時折差し込む太陽の光が雪面にゆらゆらと波のような模様を描いて綺麗な景色を見せてくれる。光があるかないかで辺りの景色は大きく様変わりする。雪面に映る木の影やデコボコが作る陰影、その中に点々とついているうさぎの足跡、青空に映える樹氷など今の時期でなければ見られない景色が目の前に広がっていた。1日でいいからずれてほしかった。。。

「山池」湿原からは道標に従い南東側の尾根を越えて反対側へ谷を降って行く。点々とついたうさぎの足跡を辿るように斜面を登って尾根に上がるとそこにも素敵な樹林帯が広がっている。昨年来た時に「国際ワークキャンプ」が設置した道標を見かけた記憶があったので探してみると、2つの道標はわずかに頭を覗かせていた。山池登山口のある門割林道へ降る谷の上部はすっかり雪に埋もれている。昨年は雪が薄くて岩が見え隠れしていたので谷底を避けて登って来たのだが、今日は谷底をズカズカと降って行ける。正面にはヘラノキ平辺りだろうか、丸みを帯びたピークに背の高い木々が立ち並んでいるのが見える。最初は広くて緩やかな斜面を気持ちよく降っていたが、途中からは岩のでこぼこが現れ、雪が融けて水の流れがあるところもある。岩の隙間を踏みぬかないように足元に注意しながら、右岸から左岸、また、右岸へと渡り返して最後は杉林の中から門割林道に降りつく。

降ってきた谷を門割林道が横切るところが山池登山口で、立派な標識が2本立っている。ひとつは「国際ワークキャンプ」が設置したものだ。もう一つは「山池」湿原にあったのと同じもので「国見岳まで90分」の表示がある。もちろん、無雪期の時間だろう。。。

門割林道は一面雪に覆われている。衣服調整をしながらしばらく休憩してからしゃくなげ峠を目指して出発する。ここからしゃくなげ峠までは緩やかな登りになっている。路面の雪の状態はやや深い所、浅い所、ゆるい所、硬い所と変化が激しくて結構歩きづらい。それに石ころが転がっているところは落石にも注意しなけれがならない。雪の上には動物の足跡が沢山ついている。中には落ち葉が溜まっているものもあって面白い。時々、西側の谷の向こうに樹氷で白くなった国見岳が見える。望遠で写すと山頂の祠まではっきりと見える。途中に開けた所があって、国見岳から小国見岳、五勇山と続く山並が一望できた。どの山も山頂部は樹氷で白くなっている。谷、尾根、谷、尾根を何度も繰り返してようやくしゃくなげ峠に到着だ。山池登山口からここまで約2.4km、約2時間かかった。途中から犬の足跡が沢山ついていたが、どれも今日のものではなさそうだ。追い返しはしたものの、帰りにもう一度会えるかもしれないと心のどこかで期待しているようだ。

しゃくなげ峠からは初日に通った所なので気が楽である。三角点「雷」を巻いて尾根に出ると登山道をワイヤーが斜めに横切っているところがあるので視界が悪い時には注意しなければならない。最初にジグザグに降る所の手前には大きな松の倒木がある。この松の倒木は朽ちる様子もなく、前回来た時とあまり変わっていないので不思議に思っていると、幹の先の方にはまだ青々とした葉が茂って、松ぼっくりも沢山ついている。斜めに倒れているがまだ生きているのだ。ここで、朝の残りのパンやソイジョイなどで簡単な昼飯にして、ジグザグに降り始める。一旦降って鞍部に着くと今度は緩やかな登りが続く。このあたりは1400mm辺りをピークに両側へ緩やかな尾根が降っている。気温が大分上ったのか、ところどころ雪が融けて落ち葉が見えているところもある。雪の上には私の足跡と犬の足跡が入り乱れて、時折鹿の足跡がそれに重なっている。

上の小屋谷分岐あたりの雪は大分薄くなっていて、2箇所の崩壊地も雪が融けて完全に地肌が見えていた。植林帯に入ると雪はほとんどなくなり、今度は落ち葉や木の枝で滑らないように注意しながら、来たときの逆にポイントを拾いながら降って行く。最後の鞍部から竹林を降って雷坂登山口に着いたのは午後3時40分。せっかく雪で綺麗になっていた靴とスパッツが最後の最後竹藪の降りで泥だらけになってしまった。。。


久しぶりの遠出、この廃屋の横で4日間も待ち続けてくれた愛車RAV4に感謝!!

(写真:表:杉の木谷登山道分岐付近でテント泊 裏:山池登山口)


あとがき

 今回は、犬たちの出現というハプニングがあったが、思った以上に雪山を堪能できた。昨年よりも雪が多く、山頂付近は軽いラッセル状態だった。国見岳山頂で初日の出を拝むという願いは叶わなかったが、山頂を踏めたので良しとしたい。雪の国見岳には樅木側から一度登ったことがあり、今回反対側から登ったことで山頂部の様子が大体分かった。

今回もいろいろと課題が残ったので来年までに勉強して解決しておきたい。来年はドッグフードでも持って行くか。。。

?、来年も登るつもり???


それでは、今年も一年間、安全第一で山を楽しみましょう!!


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