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谷を辿れば。。。 欅谷の支谷(2010年3月22日) → 写真集


 最近、三郡山地の谷へ入ることが多くなった。きっかけは草ヶ谷で出会ったナメ滝である。何度か草ヶ谷へ足を運び、先日やっと頭巾山山頂まで遡行することができた。途中には幾つかの滝と巨木があり、源頭には冬枯れの樹林帯が広がっていた。特に上流部にあった大滝は圧巻であった。もちろん、祖母・傾や九州山地の谷には遠く及ばないが、1000mにも満たない三郡山地で、しかも一般登山道がない谷の奥にあのような滝が隠れていると思うと心をくすぐられる。とはいっても、どの谷でも歩けるわけではない。三郡山地の谷筋は毎年の豪雨でかなり荒れているのだ。

今回は以前から気になっている谷へ入ってみようと思う。それは、欅谷コースの登山口へ向かう林道(宇美林道12支線)に架かる2つ目の橋(宇美3号橋の表示がある)と3つ目の橋(宇美4号橋の表示がある)が跨いでいる谷である。谷の入口には茂みの奥に堰堤が見える。以前、何気なく覗いて谷沿いに踏み跡がついているのを見つけ、途中まで辿ってみたら、岩の間を流れ落ちる沢が意外に綺麗だった。その後、内ヶ畑コースを降っているときに途中にある赤テープから踏み跡を辿って、この谷へ降りついたことがあり、そのときは、途中で大きな岩を流れ落ちる滝を見かけた。今回はこの谷を辿って縦走路まで登ってみようと思う。今日も小さな感動に出会えることを期待しよう。。。


登山コース

昭和の森バンガロー駐車場(7:40) − (8:05)欅谷宇美4号橋(8:10) − (9:00)滝(9:15) − (10:40)岩の廊下 − (11:55)縦走路 − (12:10)P782補点(昼飯休憩)(12:50) − (13:10)前砥石山 − (14:40)宇美林道14支線 − (15:32)昭和の森バンガロー駐車場

MAP

欅谷4号橋から縦走路まで
昭和の森バンガロー駐車場 → 欅谷・宇美4号橋 → 滝 → 炭焼き窯1 → 炭焼き窯2 → 岩の廊下 → 縦走路

 今日は欅谷方面へ向かうのでバンガローの駐車場に車を停める。久しぶりに晴れたからか、上段の駐車場はほぼ満杯だ。今日はいつもより早い出発なので、まだ登山者の姿も見かける。バンガローとキャンプ場の間を通って欅谷方面へ向かう。桜はまだ咲き始めで、満開まではもう少しかかりそうだ。頭巾山コースの登山口にも例の「宇美町体育協会山の会」の標識が立っている。林道脇でたまに見かけるタラの芽はまだちょこんと出たばかりであるが、所々摘んだ跡がある。今年もタラの芽が沢山採れたらいいのだが。。。

欅谷の林道は堰堤の前を過ぎるとチェーンで車止めしてあり、近くの看板に「宇美林道12支線」の表記がある。林道は林の中へ入ると右へ左へとカーブして行くが、左へカーブする辺りから右の谷沿いに作業道が登っていて、その先に頭巾山が見える。作業道と倒木と頭巾山の組み合わせがなかなかいい形を作っていて何時もシャッターを押してしまう所だ。林を抜けると左側に崩壊した川が現れる。ゴロゴロした岩の上に流されてきたガードレールが路面のアスファルトをくっつけたままで横たわっている。豪雨による災害のものすごさが分かる景色である。川の上流に白いガードレールが見えているがこれは谷にかかる橋で、その先に谷が続いているのが分かる。あの橋のすぐ上にある、もうひとつの橋のところに今日辿る谷の入口がある。

欅谷に架かる橋は全部で4つある。豪雨で流されたものもあり、最初と最後のふたつは新しく架けなおされて真中のふたつが昔のまま残っている。最初が1号橋、最後が4号橋で、これは合っているのだが、真中のふたつは3号橋と4号橋の表示がある。2号橋はどこへ行ったのだろうか。。。
谷は1号橋の手前で分かれていて、林道は右の谷を1号橋で渡った後、3号橋で左の谷を渡り、4号橋で同じ谷を渡り返して欅谷コースの登山口方面へと向かっている。4号橋の奥には茂みの中に堰堤があって谷の様子は伺えない。この辺りは春は山桜が、秋は紅葉が綺麗なところである。

さて、今日辿る谷はこの4号橋が架かっている谷であるが、谷の右岸に踏み跡がついているので橋の手前から左の林の中へ入り踏み跡へと入って行く。林へ入るとすぐ目の前に大きな岩が迫っている。岩の手前を右へ進んで谷沿いに延びる踏み跡を辿るとすぐに大きな木が現れる。かなりの老木で幹の下の方は洞になっていて、その上で枝分かれしている。急な斜面を横切って踏み跡がついているが、右下には岩の多いなかなかいい感じの渓流が見えている。夏場に水遊びをするのによさそうだが、残念なことに日当たりが良くない。途中で、2箇所ほどいい感じの小さな滝があったので沢へ降りて写真を撮り、そのまま沢の中を登って行くことにする。

重なり合った岩の上へ上がって行くと、左側に倒木が折り重なっている。ここはふたつの谷の出合いで、左側の谷は内ヶ畑コースのAコースとBコースが合流する辺りから降ってきている。今日目指す谷は右側の谷で、こちら側は何とか沢沿いに進めそうだ。左の谷の様子を見てみようと、ちょっとだけ倒木の上へ行ってみるとキノコが沢山ついた枯れ木が立っている。椎茸のようにも見えるがすでに痛みかけているので良く分からない。ちょっと見た感じでは左側の谷は荒れているような気がする。

目的の谷を登って行くとゴロゴロした岩の先に滝が見えてきた。この滝は3段ぐらいに分かれていて、下段はなだらかで、中段はどっしりとしたボリュームのある岩を斜めに流れ落ち、上段はややまっすぐに細い流れが落ちている。何れも高さは無いが、それなりにいい感じだ。特に中段は岩の厚みが迫力があってよい。谷は滝の上で二俣になっていて、以前、左の谷からここへ降ってきたことがあるので、この滝の存在は知っていた。滝を過ぎると次第に倒木が多くなってきた。沢も岩の上を斜めに流れ落ちているが、途中に岩が転がっているし、水が流れている岩もまだ角が取れていない。いつか水で磨かれて綺麗なナメ滝ができるのだろうか。それともまた、崩壊してしまうのか。。。

折り重なった倒木を何とか乗り越えていくと左手に炭焼き窯の跡が見える。ここも二俣になっていて左の方には苔むした岩が転がっている。なんとなくよさそうな谷である。しかし、右側の谷は杉の倒木が多くて苦しめられる。倒木を過ぎると左の斜面が崩壊している。倒木や流木が多いところでは必ずどちらかの斜面が崩壊しているのだと、やっと気付く。崩壊地を横切って、再び谷底へ降り倒木をこなして、ちょっとした二俣を右へ進むとまた左手に炭焼き窯の跡が現れる。下から見ると窯の石組みが小さな城壁のように見える。

さらに、ここからが大変だった。倒木が谷を埋めて通れないので右の斜面を高巻いて行く。谷の出合はどこも岩と倒木で埋め尽くされ、岩の上の土砂が溜まったところにはイバラが生えて歩くのに難儀する。この辺りの人工林はどれも細くて間隔が詰まっている。間伐が行われていないのだろう。右の尾根には欅谷Aコースが通っているはずなのでそちらへ逃げようかとも思ったが、何とか倒木をかわして行くと右斜面が大きく崩壊しているところに出た。崩壊地からイバラの生えた谷底へ降りて先へ進むと大きな岩の陰に細い滝が見える。その滝の上に上がると岩盤を削って出来た溝をウォータースライダーのように水が流れ落ちてくるのが見え、さらにその奥の右側は岩の壁になっている。迫力のある風景だ。この景色に出会えて今までの苦労が吹っ飛んでしまった。谷の右側は岸壁が続き、その下の溝のように窪んだところを水が流れてきている。左側の岩の上に平坦な部分が続いているので何とか先へ進めそうである。よく見ると、ここも二俣になっているようで右の谷の入口には岩盤が立ちはだかっているようだ。右の谷は欅谷Aコースの通る尾根に沿って登っていて、以前同コースを歩いているときに降りてみたい衝動に駆られた谷である。実を言うとそちらが、本来、今日目的としていた谷であったのだが。。。

しかし、左の谷の景色を目の前にしてしまったからには、そちらへ足を向けざるを得ないだろう。右岸の岩の上を辿って谷の上部へ登って行く。谷の奥には白い大きな岩があり、その上は林になっている。また、右側の岸壁には上の林の中から細い滝がまっすぐに落ちている。様子を見るために左から高巻いて白い岩の上へ上がり、登って来た方を見ると、谷の向こうに頭巾山が見えている。どうやら上の方が崩壊しているようで、岩の周りはイバラが生えている。右の滝が落ちている方の谷を覗きに行って見ると、こちらは安定しているようで林の中を緩やかに登っている。ふたつの谷の間の尾根には露岩が連なっていて、その尾根へ上がると、今度は谷の向こうに宝満山が見えている。左の谷は上の方で左へカーブしているので下からは見えなかったが、やはり崩壊していて白い地肌が見えている。おそらく、崩壊地の上の尾根には内ヶ畑コースが通っているはずだ。

どちらへ行こうか迷ったが、左は傾斜も急で崩壊地を登るのは危険そうだったので右の谷を縦走路まで辿ることにする。右の谷は岩盤が露出していて谷底は滑床状態になっている。岩は濡れていて歩けそうにないので林の中を登って行く。谷の源頭部はは潅木が茂っていて歩きにくい。細い木が沢山生えていて、なぜか土埃の匂いがする。それに、木の枝に触れると服や帽子に白い埃がつく。おそらく黄砂が降って木の枝に積もっているのだろう。林の中を右下から左上へ横切る細い踏み跡を見つけたのでそれを辿って左上へ向かう。おそらく小動物の獣道だろう、背丈の低い木の下でもお構いなく続いている。そうこうしているうちに傾斜が緩やかになって縦走路へ飛び出す。出たところは右から左へ緩やかに降っている所で、欅谷Aコース入口と内ヶ畑コース入口の中間地点辺りだ。

(写真:老木と岸壁の谷)


縦走路を前砥石山まで
内ヶ畑コース分岐 → P782補点(昼飯) → 内住峡分岐 → 前砥石山

 冬枯れの縦走路を左へ向かう。少し降ったところが鞍部で、左側に木の枝で通行止めの印がしてある。これは、内ヶ畑コースのふたつある入口の一方の入口で、辺りの木の枝には沢山のテープやリボンがつけてある。ここから登りきったところがもうひとつの入口で、こちらには標識が付けてあり、ベンチも置かれてある。ふたつの入り口はほんの1、2分しか離れておらず、尾根を少し降ったところで合流しているので鞍部の方の入口は必要ないのかもしれない。

縦走路脇の細い木はシロモジの木で黄色い蕾が膨らんで、まさに開こうとしているものもある。もうすぐ、黄色い花が咲き乱れることであろう。シロモジの花はアブラチャンやダンコウバイとも似ていて、長い間アブラチャンだと思い込んでいたのだが落ち葉の形でシロモジだということが分かった。いよいよ三郡山地にも花の季節がやってくる。

久々の晴天で気分よく歩いて行く。今日はいつもより出発が早かったので縦走路に出たときに丁度お昼になった。どこで昼飯にしようか考えながら、露岩のP782を過ぎて内住峡分岐へ降る手前の、ヒノキの根元に補点があるところで昼飯にする。気持ちよくて昼寝をしたいくらいだが、休憩しているとまだまだ肌寒い。昼飯を食べている間にも何組かの登山者が通り過ぎて行く。ほとんどが中高年であるが、今日は珍しく若者のグループも通り過ぎて行った。出発の準備をしていると砥石山方面から来た高年のグループの一人が林の中へ入って何かを探している。どうやらショウジョウバカマを探しているようで、そのうち「あったあった」という声が聞こえてきた。林から出てきたときに声をかけてみると、まだ、背丈が低く、時期的にはもう少し先のようだ。先日、草ヶ谷の源頭部で見かけたショウジョウバカマも花は咲いていたが背丈が低かったのを思い出した。

内住峡分岐を過ぎてダラダラと前砥石山山頂へ登って行く。前砥石山山頂は明るい山頂で背振山方面の展望が良い。山頂には数人の登山者が休憩していて、一組は先ほど通っていった若者のグループだ。中高年の登山者しか見かけなくなったこの頃、若者の登山者を見かけるとなんだかうれしくなってくる。

(写真:春間近の縦走路)


前砥石山から谷を降って昭和の森まで
前砥石山 → 鞍部手前 → (谷を降る) → 宇美林道14支線 → 昭和の森バンガロー駐車場

 前砥石山から砥石山を目指す。今日は鬼岩谷まで行って宇美林道の終点へ降り、林道の様子を見ながら昭和の森へ帰ろうと考えていたが、前砥石山の降りで、またまた、天邪鬼が出てしまった。砥石山と前砥石山の鞍部は瘠せ尾根になっていて、そこから南へ降っている谷は途中で宇美林道14支線にぶつかる。そこは、以前崩壊していたが新しい堰堤が出来ていて、堰堤の奥に岩が露出した渓谷がある。渓谷の入口付近を覗いてみてなかなかいい感じだと思っていた。実は今日辿った谷とこの谷のどちらへ入ろうか最後まで迷っていたのだ。「確か鞍部の辺りは笹薮になっていたはずだな。。。」などと考えながら体は左の林の中へ向かっていた。

鞍部の少し手前の小さな谷を降って行く。林が切れると正面の尾根の向こうに背振山が見えている。眼下には崩壊地のような少し広いスペースがあるようだ。おそらく、鞍部から降ってきた谷との出合いであろう。ちょっと危なっかしいところを何とか降って行くと右の谷との間は土が盛り上がったようになっている。後で気付いたがこの谷の岩はもろくて壊れやすいようで、盛り土のようなところも尾根の突端の地肌が露出していたものだったようだ。

ボロボロと崩れやすい岩と倒木の谷を降って行く。途中で見つけたふきのとうとスミレの花が唯一の慰めだ。途中に一箇所だけ岩の溝を流れる滝があったがやはり倒木が邪魔している。最後に右から崩壊した谷が合流するとその下は岩盤がむき出しになっていて、ちょっと迫力のある景色になっている。岩の上から降ると谷は右へ折れて堰堤に突き当たり、林道の下を横切って昭和の森へと降って行く。結局、この谷は林道から入ったところだけがいい雰囲気であったようだ。それが分かっただけでもよしとしようか。。。

林道を昭和の森に向かって降って行くと途中で右の谷に、また、新しい堰堤が出来ていて林道から作業道が作られていた。この谷が林で覆われるのは何時の日のことだろうか。。。

(写真:宇美林道14支線の堰堤の奥にある景色)


あとがき

 今回辿った谷はどちらも崩壊が激しくて倒木と流木で荒れてしまっていた。また、崩壊の跡地にはイバラが茂っていて歩くのに苦労させられる。しかし、登りに辿った谷は最初の方の渓流の景色や、その上のボリュームのある岩を流れる滝、そして最後の岸壁の廊下がそれなりに楽しませてくれた。一方、降りに辿った谷は、林道に出る直前の岩が露出した流れだけが印象に残っている。

三郡山地にも春が近づいている。縦走路はシロモジの黄色い花で囲まれ、登山道脇のショウジョウバカマが可憐な花を咲かせて登山者の目を楽しませてくれるのももうすぐだ。

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