山歩記 ][ 写真館 ][ ホーム ]

犬鳴ダム東尾根の林道トレース(2009年6月16日) → 写真集


 最近、犬鳴ダムの近くで高圧送電線の鉄塔を建設する工事が行われている。今年の2月にダム湖(司書の湖)を取り巻く尾根を周回縦走した時に、縦走路に沿って何処までも並走する林道が出来ているのを知って愕然としてしまった。かつては鬱蒼とした照葉樹林帯の中の縦走路もすっかり明るくなってしまい、途中には鉄塔を建てるために伐採されたピークも何ヶ所かあった。辰ノヘラの近くには建てられたばかりの巨大な鉄塔が聳えており、その近くまで林道が延びていた。

今日はこの鉄塔工事用に作られた林道が何処を通っているのかGPSでトレースしてみようと思う。登りには、以前、犬鳴御別館跡を散策したときに見かけた登山口からのルートを使用し、降りはタタラ谷コースを使うことにする。事前に御別館跡からのルートの情報を収集しようと思ってネットで検索してみたが、今年の3月に西日本新聞の同行ルポの見出しだけが検索に引っかかり本文は公開終了になっていて情報を得ることは出来なかった。


登山コース

御別館跡入口ゲート(12:55) − (13:08)御別館跡登山口 − (13:48)縦走路(13:54) − (14:03)草場岳(14:10) − (14:32)鉄塔(14:38) − (14:46)林道終点 − (15:00)御別館岳展望台(15:08) − (15:16)林道分岐(林道支線の終点まで散策) − (15:30:)大平林道 − (15:55)大平林道終点(16:00) − (16:10)タタラ谷コース降り口 − (16:22)タタラ谷分岐 − (16:40)タタラ谷登山口 − (16:58)御別館跡入口ゲート

MAP

御別館新ルートから縦走路へ
御別館跡入口ゲート → 御別館跡登山口 → 縦走路 → 草場岳 → 往来岳 → 送電鉄塔

 犬鳴ダムのダム湖(司書の湖)の周回道路は時計回りの一方通行になっていて、湖の最奥(親水公園がある)で司書橋を渡ると左へ車道が分岐している。この道路の突き当りは西山へのメイン登山口(本HPでは「司書口」と表記している)となっているが、途中でゲートで閉じられた道路が右へ分岐している。これが犬鳴御別館跡へ向かう道である。ゲートの右側に草を刈って作られた狭い駐車場に車を停めて、ゲートの脇を抜け舗装路を登って行くと左へ分岐があり「御別館跡」の標識が立っている。犬鳴御別館は幕末に福岡藩家老の加藤司書が有事の時に藩主を避難させる為に作ったと言われている。ちなみに、犬鳴ダムのダム湖を「司書の湖」と呼ぶのはこの加藤司書に由来するそうだ。今は石垣の一部と城門の跡が残っていて石垣の上に記念碑が立っている。

分岐を犬鳴御別館跡へ向かわずにそのまま登って行くと左へ、右へと曲がって舗装が途切れた所で右側が開けてくる。広場の中央の砂利道を進んで行くと柵で囲まれた所があり中にはヘリポートが出来ている。柵の左側を通って突き当たりを右へ登って行くともう1ヶ所広場がある。こちらの広場には人工物は何も無く、突き当たりは杉林の低い尾根になっている。その杉林が少し切れている所が登山口で、入口の木にワープロで作った標識が取り付けてある。標識には「西山登山コース口」の表記があり、ここから登って行くと「林道・登山道」に突き当たり、左が西山、右が脇田温泉へ向かうルート図が記載してある。おそらく「林道」が今日トレースしようと思っている新しく出来た林道で「登山道」は縦走路のようだ。地図を見ると乙野岳と草場岳の中間辺りから降っている尾根があるので、多分これを登って行くのであろう。

登山口から杉林の斜面を登って尾根に出ると尾根沿いに左へ登って行く。かなりの急登だが距離は短そうなのでガンバル!左へ尾根が分岐する辺りで登山者が独り休憩していた。このルートで人に会うとは思っていなかったのでチョッとビックリしたが休憩しながら言葉を交わして先に出発する。林の中に点々と続くピンクのリボンを追って急坂を登って行くとやがて平坦な尾根に出る。ここは西山への縦走路が通っている尾根で左へ行くと西山、右へ行くと乙野岳を越えて大平林道から脇田温泉口やタタラ谷登山口へ降ることが出来る。林の反対側が明るくなっているので覗いてみるとすぐ下を林道が通っている。この林道が今日トレースしようと思っている高圧送電鉄塔建設の工事の為に作られた作業道だ。

縦走路を左へ向かうと少し登ってから杉林の中を降って林道に出る。チョッとだけ林道へ出てからすぐにまた左の林へ入っていくが、右下を林道が平行して通っているので以前に比べてずいぶん明るくなってしまった。緩やかに登って行くと前方が明るくなってきた。登山道は左の林の中を通っているようだが、そのまま直進すると伐採されたピークに出る。ここは草場岳の山頂であるが、高圧送電線の鉄塔を建てる為に伐採されてしまった。山頂の東側を林道が通っていて、その向こう側には若宮盆地の彼方に左の皿倉山から尺岳、福智山、牛斬山と続く山並みが一望できる。

前回来た時は、草場岳から一旦林道へ降って反対側の林の中を左へ回り込むようにして往来岳へと向かったが、今日は草場岳の西側の林を通って孟宗竹の中を林道の終点辺りへ降り、林道終点に作られた工事用の広場の左側に沿って作られている迂回路を通って往来岳へ向かう。右前方の尾根上には最近出来たばかりの巨大な鉄塔が聳えている。清水方面から工事が進んできたようでこの鉄塔までは電線が張り終えているようだ。これから犬鳴ダム方面へと工事が進んで行くようなので登山道にも影響が出るかもしれない。

往来岳の周辺は孟宗竹が茂っていて北側は杉林になっている。名前がつけられているが特に何もない小ピークだ。登山道は、以前は往来岳の北側から西の杉林の中を回り込みむようにして尾根に出ていたが、今は杉林の中に鉄塔工事用の階段が作られてまっすぐ登って行けるようになっている。今日は古い道を探して歩いてみたが、自然林が残っている所では所々目印のテープを見かけるものの、杉林の中は伐採した木で踏み跡が分からなくなっている。ここは素直に階段を登って行く方が良さそうだ。階段を登りきった所で工事用の道は右へ階段が続き、登山道は左前方へ進んでいる。右上の尾根にはさっき見えていた巨大な鉄塔が建っている。

鉄塔の下からの展望もまずまずで、南側には林道終点の広場の向うに乙野岳や遠くは三郡山地まで見えている。今日は新しい林道をGPSでトレースする予定なのでここから引き返すことにする。

(写真:表:草場岳山頂 裏:出来たばかりの送電鉄塔)


林道をGPSでトレース
送電鉄塔 → 林道終点 → 大平林道支線に合流 → 大平林道支線終点 → 大平林道 → 大平林道終点 → タタラ谷コース降り口 → タタラ谷分岐 → タタラ谷登山口 → 御別館跡入口ゲート

 鉄塔から林道の終点に戻って大平林道へ向かう。林道の終点を出発するとすぐに左右へ階段が付いている。これが本来の登山道が通っているところで、現在は通行制限になっており迂回路が作られている。右上には鉄塔建設予定地の草場岳山頂がある。林道は草場岳山頂の東側を巻いて、尾根の鞍部に突き当たった所で登山道と交わりすぐにまた尾根の下側を通って行く。おおよそ標高580mから600m辺りを水平に延びているようだ。右の土手の上の木の幹に張り紙が見える辺りが御別館新ルートへの分岐があるところだ。以前は不安になるくらい鬱蒼として暗い林が続いていた辺りだが、今はすっかり明るくなってしまった。この林道は縦走路のすぐ横を通っているので、時々右上の林の中にピンクのリボンが見える。

途中で右上へガードレールが上っている。これは乙野岳の近くの伐採地へ上る作業道だ。ここにも鉄塔が建つのだろうか、伐採地は整地されて機材が置いてある。土手の上の木に「御別館岳展望台」の標識が貼ってあり、ここからも宮若市側の展望が開けている。林道はもう1ヶ所登山道のすぐ真横を通る所があるがこちらはかろうじて交わらずに済んでいる。やがて前方に舗装された道路が見えてきて、大平林道から分岐してきた支線に合流する。

大平林道から分岐した支線はここで尾根を越えるとさらに東側へ延びている。以前は草に埋もれて廃道化していたのが送電線の工事が始まってから整備されて綺麗になっている。登山道はここで林道を横切っているが、大平林道から歩いて来た場合はここから登山道へと入って行くことになる。それにしてもここから先も綺麗に整備してあるのはなぜだろうと思って終点まで行ってみると、そこではなにやらクレーンで工事をしているところであった。ここから南西へ降る尾根の途中に1ヶ所伐採された所があるので、もしかすると林道をそこまで延ばすのかもしれない。

引き返して支線を降って行くと大平林道に合流する。新しい林道と大平林道支線の分岐から大平林道までの間は舗装されている。大平林道と合流する所には登山道のルート図が取り付けてある。脇田温泉口から西山までの縦走路は林道を通るのが普通になっているようだ。

大平林道を西山大観望方面へ向かう。林道が少し広くなり、右側が土手になっているところがある。この土手の上の林の中に踏み跡がついていてタタラ谷から西山へ縦走するときはこの踏み跡を歩くことが多い。最初にこのコースを歩いたときは、ここから林の中へ入り大平林道支線と新しい林道が分岐している地点まで歩いたのだが、今は藪が茂って林の中へ入るのをチョッと躊躇してしまいそうだ。さらに先へ進むと左側に整地された空き地が現れる。ここからも、林道が左へ曲がる辺りから林の中の踏み跡へ入ることが出来きて、最近はもっぱらこちらの方を利用している。

西山大観望入口、脇田温泉口への降り口と過ぎて木漏れ日の林道を歩いて行く。左へ曲がる谷の辺りにはプレハブの作業小屋があったが、いつの間にか取り壊されてしまっている。このすぐ先は永いこと崩壊して通れなくなくなっていたのだが、やはり綺麗に整備されている。タタラ谷コースの降り口を過ぎて林道の終点まで行って見る。左側には犬鳴山から連なるダム湖対岸の尾根が見える。林道はタタラ谷コースの降り口より500m程先で終り整地された広場になっている。西側の谷を隔てた隣の尾根に伐採された所があり、林道終点からそちらへ向かって木が刈られている。おそらくあの伐採地にも鉄塔が建つのだろう。南側を見ると猫峠辺りの山の中にも2ヶ所クレーンが突き出ているが、送電線はあちらへ延びて行くのだろうか。そういえば龍王山や三郡山の裏側にも新しい鉄塔が建っていた。。。

タタラ谷コースの降り口へ戻って林の中の登山道を降って行く。タタラ谷コースは植林帯と自然林が入り混じっていて、薄暗い中にスポットライトを浴びた若葉が綺麗だ。このコースで迷いやすい所は南へ尾根が分岐している辺りで、ここで登山道は西へ曲がっているので直進しないように注意が必要だ。一応、直進方向には枝で通行止めの印がしてある。もう1個所はタタラ谷への降り口だが、尾根はさらに西から南へ降っていて尾根上には明瞭な踏み跡が付いている。そのまま尾根を進むとダムの近くの高台へ降る隠れルートがある。タタラ谷への降り口にはピンクや黄色、白などのテープやリボンが沢山付いているので気をつけていれば見逃すことは無いだろう。

タタラ谷への降りはかなりの急坂で、コース上にはピンクのリボンが取り付けてある。最後に右へトラバース気味に進みロープを張ったところを降ると沢に降りつく。沢を渡って左前方へ進み、杉林の中の踏み跡を辿る。以前、大平林道の終点からここへ降って来たときに杉林の中にある墓地に出くわしたことがある。江戸時代のものでかつてこの谷に人が暮らしていたのだということを実感したものだ。右から谷が降ってきている所で丸太橋を渡ると登山口のあるダム湖の周回道路へ出る。以前は登山口に標識があったのだが、何故かなくなっていた。周回道路へ出た所には右側に黒い石で作られた庚申尊天の碑があり、左の方には道路の反対側に記念碑が2つ立っている。

ダム湖の周回道路を歩いて御別館跡入口へと向かう。西側の尾根が影を落とすダム湖の向うにどんどんのどっしりとした姿が覗いていた。

(写真:山腹を横切って延びる明るい作業道)


あとがき

 新しく出来た林道は全長約1.4kmで草場岳と往来岳の間で終点になっていた。ほとんどの区間が縦走路の東側を平行して通っていて登山道と接したり、交わったりする所が2ヶ所あった。元々あった草に埋もれかけていた林道も綺麗に整備されていた。送電鉄塔は往来岳近くの鉄塔まで完成していてそれより南はこれから工事が始まるようだ。この送電ルートは司書の湖の上を横切って西側の尾根へ延びるそうなのでこの山域を歩く場合は工事状況に注意を払う必要がある。

大平林道から西山へ向かうコースは、西山大観望と鉄塔がある所以外は全く展望を得られないコースだったので、所々、展望を楽しめるようになったのはいいが、鬱蒼とした林の中をチョッと緊張しながら歩くのが楽しかっただけに、新しい林道が出来てすっかり明るくなってしまったのは残念である。

御別館新ルートはひたすら急坂を登るだけで展望もないコースであるが、司書口からこもの峠経由で西山へ登るメインコースが雪害(倒木で荒れている)で通れなくなっているそうなので代わりのコースとして使用できそうだ。

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送