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九州脊梁山地縦走(2007年5月3日〜6日) → 写真集


 最近、内大臣林道の小松神社入口辺りから登る2つのコースが気になっている。ひとつは西の馬子岳へ登るコース、もうひとつは東の天主山に登るコースである。どちらのコースも内大臣林道が通行止めになってから目につくようになったコースで、一般的な登山コースではないようだ。

 地図を眺めていると、この2つのコースが九州脊梁山地を巡る尾根で結ばれているのが分かる。ここを縦走することができれば、脊梁山地中心部の山を一気に8座登る周回縦走を実現できる。さっそく情報を収集してみると目丸山から京丈山、さらには平家山までの間の情報が少ない。なかでも、柏川林道合流地点から京丈山まではかなり厳しそうである。とりあえず、2泊3日、予備日1日の予定を立て、内大臣へ向けて出発する。


登山コース

小松神社入口 − 馬子岳 − 目丸山 − 京丈山(泊) − 平家山 − 国見岳(2泊) − 高岳 − 椎矢峠 − 三方山 − 天主山 − 小松神社 − 小松神社入口

MAP

5月2日(内大臣で車中泊)


 自宅を出て、日田、小国、阿蘇と車を走らせる。久しぶりの遠出でちょっと緊張している。吉無田水源で水を汲み、内大臣橋へ向かう。内大臣橋を渡ったところでオフロードバイクの若者が1人休憩していたので内大臣林道の様子を聞くと、何とか通れそうだと言う。通行止めは解除になったのだろうか。疑問に思いながら内大臣林道へと入って行く。

 途中、ショベルカーが路面工事をしていたが除けて通してくれた。小松神社入口までは事無く入ることが出来た。今日はここで車中泊の予定だが、様子を見に先まで行って見る。前回来た時は、杉ノ木谷登山口の手前で崩壊していて通れなかったが、崩壊地は立派に復旧されて、路面は舗装されていた。今回は、杉ノ木谷登山口までは入れたが、その先ですぐに通行止めになっていた。

 引き返して、馬子岳登山口を確認した後、小松神社入口辺りを散策する。橋を渡ると右側が小松神社入口で木の鳥居が建っている。左側にもうひとつ鳥居が建っていて小さな祠がある。鳥居には「山神社」と書いてある。橋を渡った所から左前方へ荒れた舗装路が登っている。これを辿って行くと門のようなものがあり、中は平坦な林になっている。門の傍には記念碑のようなものがある。どうやら分校の跡地のようだ。平坦な林は校庭だったようで、桜の木が何列かに並んでいる。校庭跡の上の方には校舎の土台が何棟分か残っている。

 そういえば、最近買った「脊梁50名山」という本に内大臣にはかつて「家庭教育場」というのがあって、後にどこかの小学校の分校になったと書いてあるのを読んだ覚えがある。ここが、その場所だったのだ。記念碑を見ると「矢部町立白糸第三小学校内大臣分校」とある。裏には「八人の歌」なる歌詞が刻まれてあった。昭和55年3月31日とあるから、私が高校の遠足で始めて国見岳に登ったときには、まだここに分校があったことになる。

(写真:旧白糸第三小学校内大臣分校跡)


5月3日(その1) 内大臣林道から目丸山まで
小松神社入口 → 馬子岳登山口 → 馬子岳 → 目丸山

 5:00に小松神社入口を出発。内大臣林道を少し引き返して、西内谷の入口に架かる橋を渡ると左へ作業道のようなもの(かつてのトロッコ軌道跡らしい)が延びている。これに入ってすぐのところに馬子岳登山口がある。右側の斜面へ道が登っていて、入口に登山口を示す木の標識がぶら下がっている。

 ジグザグに登った後、岩の多い杉林の斜面を北西へトラバースして行く。ガレ谷を横切ってしばらく行ったところで赤い矢印の標識が左側を指している。ここから南西へ方向を変えて急斜面をガレ谷の上部へ向かって進んで行く。傾斜は急で、3泊分の装備を詰めたザックがずっしりと肩に堪える。一旦、平坦な尾根に出て、大きな岩が現れてくると岩の基部を回り込んだり、岩と岩の間を登ったりしながら、猛烈な急坂を登って行く。道らしき道は無く、ひたすら赤テープを辿るだけだ。

 傾斜がやや緩やかになり、やせ尾根を登って行くと黄色いツツジに光が当たって淡く輝いている。始めて見るが、これがヒカゲツツジであろう。花を追いかけて登る趣味はないが、ガイドブックやネットの山行記録などで名前だけは知っている。ヒカゲツツジは馬子岳山頂の前後に多く咲いていた。

 馬子岳山頂は登山道の右側にひょっこりと現れる。前方にもっと高いピークが見えているし、山頂からそのまま登りになるので気をつけていないと見過ごしてしまいそうだ。三角点はないが、「図根」と描いた標石が設置してある。

 目丸山方面へは馬子岳山頂からさらに登って行く。ヒカゲツツジを眺めながら1228mピークに近付く。この辺りは倒木が多く、雑然としている。ピークを降り、小ピークをひとつ越えると明るい鞍部に出る。左手はなだらかに谷へ降って、右側には潅木が茂っている。どうやら、ここが西内谷への降り口らしい。帰ってから調べてみるとネットで得た情報よりひとつ手前の鞍部にあるようだ。1228mピークから降って2つ目の鞍部になるのだが、1つ目の鞍部は地図上ハッキリと現れていないので勘違いしてしまったのだろう。等高線が広く開いているところに鞍部と小ピークが隠れているのである。

 西内谷分岐の鞍部の次のピークは北の尾根へ迷い込みやすいので要注意である。尾根へ登り上げたら南へピークを目指して、ピークに行き着く前に、倒木を回りこんだところで斜面を降って行く。

 もうひとつピークを越えると杉林の鞍部に着く。この辺りから踏み跡が割りと明確になってくる。斜面を登ってしばらくで右から青石からの登山道が合流する。先ほどから声が聞こえていたが、数名のグループが青石方面から登ってきた。目丸山のカタクリ鑑賞に登って来たようだ。ロープに挟まれた窮屈な登山道を進んで行くとチラホラとカタクリの花が咲いている。

 目丸山山頂はなだらかで広いのだが、カタクリ保護のためにロープが張り巡らされているので休憩するスペースを探すのも大変だ。ロープの間を登山者がカメラを構えて行き交う。私も山頂記念撮影とカタクリの花を数枚撮って早々に退散する。

(写真:馬子岳のヒカゲツツジと目丸山のカタクリ)


5月3日(その2) 目丸山から京丈山まで
 目丸山 → 西内谷下降点 → 林道 → 京丈山

 京丈山への縦走路は目丸山山頂から西へ向かい、ロープが切れる辺りで左から回り込むように進む。最初はなだらかな広い樹林帯を降るが、やがて急坂となり、西内谷下降点に降り着く。途中には「西内谷」、「京丈・西内」等の標識がある。「脊梁50名山」によると、ここから西内谷へ降ると「龍の髭」と呼ばれていた場所へ降りつくそうだ。「龍の髭」、なんとも心惹かれる名前である。

 西内谷下降点からは穏やかな樹林帯を歩いて行く。鞍部に着くたびに西内谷へなだらかに落ちて行く谷の景色が美しい。途中で昼食を摂って、1173mの手前の鞍部で右側へ進むと林道に出る。傍らには「目丸山 九州ハイランド」と書いた標識が立っている。どうやら目丸山の登山口になっているようだが、今はここまで車では入れないらしい。東側には目丸山の丸い山頂が見えている。

 林道を300m程歩いて土手が低くなった辺りから土手に上がる。近くの木に赤いテープが控えめに付いている。さて、ここからが問題である。地図上でルートが確認できていないのだ。GreenWalkの記事で土手の高さが3m程の高さになるところまで土手を進んでから左の杉林へ入ると書いてあった。この記憶が赤テープの存在を忘れさせてしまった。結局杉林の中を30分程うろついて、元の場所へ引き返し、初心に戻って赤テープを探すことにする。

 赤テープは林道から真直ぐ林の中へ入っていた。土手へ上がったらそのまま林の中へ入って行けばよかったのである。バイケイソウで踏み跡が隠されて分かりづらいが、人工林に突き当たる辺りで右へ折れて人工林と自然林の境界を登って行く。地図を見ると北側の尾根と北東側の尾根が合流して1375mの北西へ向かっている。今登っているコースは北東側の尾根の北斜面についている。笹は枯れてあまり問題にならないが、尾根に登り上げたあたりからは少し煩くなってくる。尾根の反対側へ踏み跡がついているが、これには入らず、右へ尾根通しに進む踏み跡を辿る。

 北側から登ってきた尾根と合流する辺りは少し笹が煩くて荒れているが、右へ登り上げると反対側から踏み跡が合流する。北側の尾根にもルートがあるのかも知れない。ここで左へ鋭角に折れて、あとは柏川コースとの合流地点までひたすら登って行く。笹は濃いが、葉が無いせいか勢いが無く、あまり苦にならない。荷が重いので倒木の方が大変である。乗り越える分にはそれほどでもないのだが、下を潜るとなると這いつくばらないとザックの背がつっかえてしまうので、かなり体力を消耗する。柏川コースと合流して左へ登り、杭の立った小ピークを越えてさらに登ったところが1375mのピークであるが、ここは笹の中で何も無い。

 1375mピーク辺りからは笹の勢いが増してくる。葉もしっかりとついて茎も強い。行く手には時々京丈山らしいピークが見える。一旦降って次の登りはちょっと迷いやすい。左前方の笹の中へ突っ込んで行って、右へ回り込むように尾根へ登って行くので、しっかりと赤テープを探す必要がある。岩の多い尾根を進み、ロープの掛かった岩を越えて、降る途中でT字路に突き当たる。これも柏川コースとの合流のようだ。ここを左へ進んで、いよいよ最後の登りにかかる。

 笹の根元にチラホラとカタクリの花が見える。背丈も高く、勢いを増した笹をひたすら漕いで、屋根のついた山頂標識の背が見えたら京丈山の山頂だ。

 京丈山の山頂は狭く、北西側が開けていて茂見山、洞ヶ岳などが見える。山頂には素敵な山頂標識と山神さまがある。今日はカタクリの花も山頂で迎えてくれた。明日以降のことを考えればもう少し先まで行きたいところだが、今日の体力は尽きたようだ。今日はここでテントを張ることにした。

(写真:京丈山山頂にて)


5月4、5日 京丈山から国見岳まで
京丈山 → 平家山 → 国見岳

 空はどんよりと曇っている。風も強くなってきた。今日は平家山を越えて国見岳までの予定だ。倒木が多い区間なので気合を入れて出発する。

 山神さまの前を通って行くと、すぐに分岐がある。直進は雁俣山方面へ向かう道だろうか。平家山へは左へ降って尾根の北側をトラバースして行く。気持ちの良い樹林帯が続き、尾根筋には石灰岩が露出している。再び尾根へ上がるところで早速倒木が現れた。大きなぶなの木が根こそぎ倒れている。1411m地点を越えて少し降ったところでワナバ谷コースが分岐する。ワナバ谷コースは五家荘から京丈山へのメインコースである。ここから平家山までは未知の区間なので気合を入れなおす。

 ワナバ谷分岐を出発すると倒木の連続である。オマケに雨もぱらついて来た。本降りになる前に雨具を着けるが、降ったりやんだりでハッキリしない。倒木が現れると道がどちらへ進んでいるのか見極め、迂回するか、乗り越えるか、潜るか考え、それから行動を起こすので時間がかかる。また、確実に体力が消耗して行く。しかし、踏み跡が明確なのと風を直接受けないのが救いである。

 平家山まではいつ何処を通ったのか覚えていないほど必死で歩いたが、倒木箇所以外は迷いやすいところは無かったように思う。雨が本降りになり、雨具を着けても汗で下着まで濡れて、今夜の幕営が思いやられる。最後の登りをこなして平家山登山道に合流し、左へ曲がるとすぐに平家山山頂に到着する。

 平家山山頂は林の中で展望は利かない。三角点の傍には特徴のある山頂標識が立っている。雨の中で記念撮影をするが、レンズが曇るので写っているかどうかは分からない。

 国見岳への縦走路は、反対側の倒木がが散乱したところから始まる。黄色い標識が目印となるが、以前、平家山から国見岳までピストンしたときは結構探したものだ。平家山からは巨木の樹林帯が多く現れる。特に南北から尾根がぶつかる辺りはとても様子が良い。一度、樅木林道の終点から南の尾根を通ってこの縦走路へ出たことがあるが、とんでもないヤブコギの末、この樹林帯に出くわした時の安堵感は今でも覚えている。もうすぐ新緑で輝くことだろう。

 この区間は倒木が多く、大変苦労した覚えがあるが、今は迂回路も出来て前ほどでは無くなっている。また、アップダウンが少ないので快適に歩けるコースである。それでも、広い樹林帯や、倒木のあるところでは進行方向を見極めるのに苦労するところもある。

 平家山から約2時間40分で広河原登山道と合流する。ここからは傾斜も急になる。イチイの巨木を過ぎ、シャクナゲの群落が現れると、やがて杉ノ木谷や高岳から登ってきたコースに合流し、ガスの中に霞んだ山頂の社が見えてくる。

 時刻は16:00。雨の中、さすがに登山者は誰もいない。ここまで無事に歩けたことを感謝しながら、社の前で記念写真を撮ってすぐに降る。今日は山頂から300m程降ったところにある「力水」と名付けられた水場で幕営する。

 「力水」は充分な水量で、今夜はご飯にありつけそうだ。ここまで水場が無かったのでパンやエネルゲン、フルーツ缶などで済ましていたのだ。水場のすぐ近くにテントを張れるスペースがある。ありがたいことに、地面は水の吸収が良く、水溜りは出来ない。また、山の神様のはからいか、雨が一時的に止んでくれた。

 翌日は、朝から雨が降っていた。明け方まで強く吹いていた風は大分弱まったが、この雨の中、最後の長丁場を歩く気になれない。食料も燃料も充分に残っているので予備日を使ってここで1日停滞することにした。鹿の声を聞きながら窮屈なテントの中で一日を過ごす。我慢してはいていたズボンも夕方にはほとんど乾いた。

(写真:ガスに煙る国見岳山頂)


5月6日(その1) 国見岳から椎矢峠まで
国見岳(力水) → 山池湿原 → 高岳 → 椎矢峠

 小雨が降っているが、今日は出発しなければならない。テントを撤収して「力水」を後にする。長谷登山道分岐を過ぎ、巨木の森へ入って行く。ここには何の樹か分からないが、一本の老木がある。ゴツゴツとした幹は途中で折れて太い枝が一本伸びている。幹の中ほどには目のような節があり、まるでマッコウクジラが海面から頭を突き出しているようだ。

 杉ノ木谷分岐を過ぎて、椎矢峠への縦走路に入る。広い尾根は踏み跡がハッキリしないところもあるが、山池湿原までは一昨年も歩いたので大丈夫だ。力水から50分で山池湿原に着く。ここは周りを小高い尾根で囲まれていて小さな池(と言っても水溜りなのだが)が出来ている。なかなか雰囲気のいい所だ。南の谷を降ると20分程で門割林道へ降りつくことが出来る。

 山池湿原の北側の端を通って、1575mピークの北側を巻いて降りにかかると左手に展望岩がある。岩の麓には標識が立っている。ここから南東へ踏み跡が降っているので入り込まないように注意が必要である。椎矢峠への縦走路は北へ方向を変えて進んで行く。この辺りからは杉林が多くなる。登山道は広いが木の枝が散乱している。また、所々倒木もある。

 1509mのピークは右から回り込むが、何気なく歩いていたら東の尾根へ入り込んでしまった。広い尾根で気持ちよく歩けるので、つい、ぼんやりと迷い込んでしまったが、縦走路はこの尾根の付け根で左へ折れているので注意が必要だ。引き返してよく見ると赤いテープがつけてある。1543mピークの手前の鞍部は平坦地で「ここはいいところだからちょっと休んでいきませんか」と言った意味のことを熊本弁で書いた標識がある。私は勝手に「よこうていかんですか広場」と呼んでいる。最後にジグザグの急登をこなすと高岳山頂に着く。

 高岳山頂は広い疎林帯になっていて方向感覚を失いそうになる。また、最高点と三角点の位置がずれていて山頂標識が2ヶ所にある。何度も登る山ではないが、一度山頂付近をゆっくりと散策したいものだ。椎矢峠へは山頂から北側へ急坂を降って行く。左下に谷を見ながら降り、最後は右へトラバースして隣の谷から林道へ降る。林道には高岳登山口の標識が立っている。椎矢峠から宮崎県側へ200m程降ったところにある。

 椎矢峠は高岳側の崩壊が進んでいるようだ。峠の看板の文字も薄くなって宮崎県側の文字は消えている。今はオフロードバイクと私のような物好きだけがここを越えて行くのであろう。

(写真:山池湿原)


5月6日(その2) 椎矢峠から天主山まで
椎矢峠 → 三方山 → 天主山

 椎矢峠から三方山へ向かう林道へ入る。崩壊や木の枝、笹などで車は通れなくなってしまったが、この辺りは、その昔、「那須往還」が通っていた由緒正しい道である。笹を抜けて広場に出ると、そこが三方山への登山口である。三方山の登山口は北側にもう1ヵ所あり、2つの登山口からのコースは途中で合流して山頂へと向かって行く。今日は南側の登山口から登り、北側へ降って天主山を目指すことにする。

 笹の間の道をジグザグに折り返しながら登って行くが、これが意外と長い。30分程で北側のコースと合流して、東へ尾根伝いに6、7分で三方山山頂に着く。山頂には三角点の傍に立派な山頂標識の柱が立っている。ここから尾根伝いに向坂山まで登山道が延びている。近くの木の幹に「H19 5/3 1人 3度目」と書いた黄色い木の札がくくり付けてあった。3日前に誰か登ってきたらしい。どこから登ってきたのかコースが気になるが、知りようも無いので、記念写真を撮って山頂を後にする。

 北側登山道は南側に比べてかなり荒れていて、崩壊地や倒木がある。しかし、距離的にはこちらの方が短いようだ。降りきると西側を巻いて来た林道に合流する。辺りには標識が沢山設置されていて、「久保の憩」、「緑仙峡」、「稲積山」、「遠見山」、「天主山」、「椎矢峠」、「三方山」、「向坂山」などの文字が並んでいる。ここからは何処へでも行けてしまうようだ。「久保の憩」の「憩」は地図では「息」になっているがどちらが正しいのだろう。私は今のところ現地の表示を尊重して「憩」と書いている。

 林道を北へ辿るとやがて切剥の麓で「久保の憩」方面と「天主山」方面へ分かれる。右がかつての那須往還が通っていた道で「久保の憩」、「稲積山」、「遠見山」方面へ向かう。天主山へは左の林道へ進む。途中、右側にドリーネが現れるとやがて林道終点になり、山道へと入って行く。この辺りにも山芍薬が見られるがまだ蕾は固いようだ。

 登山道へ入って10分程行った所で崩壊地に突き当たった。登山道が横切っている斜面が崩れ落ちてしまっている。幸い幅があまり広くないので何とか崩れた斜面を横切って先へ進むことが出来た。1514mのピークがある尾根の南斜面を横切って行くが、この辺りは石灰岩が多く、斜面は山芍薬の群落地になっている。まだ蕾であるが、なかに1、2株白い花を僅かに開かせているものがあった。「これが満開だったらさぞ綺麗だろうが、足はなかなかはかどらないだろう。今日は蕾で正解だ!」などと自分を納得させて、最近こちら側からはあまり歩かれていないのだろう、荒れてしまった登山道を進んで行く。

 左に見晴らしのよさそうな露岩を見ながら尾根を越えて、西へ降って行くと広い平坦な尾根に着く。初めてここへ来た時は冬だったので、倒木や木の枝が散乱して荒涼とした感じだった。しかし、今の季節は一面山芍薬で埋め尽くされている。「花が咲いたら、さぞ素敵な景色だろうな。。。」などと想像しながら雨の中で遅めの昼食をとる。

 やせ尾根の小さなアップダウンを過ぎ、最後のひと登りで今回の縦走の最後のピークである天主山山頂に着く。途中で高年の夫婦らしいペアとすれ違った。せっかく雨の中を登ってきたのに1週間早かったようだ。

 天主山山頂は南西側に笹が茂っていて展望がない。北側から鴨猪川への登山道が降っているが、登山道は植物保護のためにロープで挟まれている。鴨猪川コースは椎矢峠まで車が入れないので、現在、天主山への唯一の登山道となっている。

(写真:天主山の山芍薬)


5月6日(その3) 天主山から小松神社入口まで)
天主山 → 北内谷林道 → 小松神社 → 小松神社入口

 天主山から小松神社へ降るコースは、鴨猪川コースの途中から分岐している。ロープで挟まれた登山道は最初は西へ向かい、その後北の尾根を降って行くが、雨でぬかるんで滑りやすい。ツアーの団体が登ってきたらグチャグチャになりそうでちょっと心配だ。しかし、椎矢峠側には、なぜ、ロープを張っていないのだろうか。不思議に思いながら30分程降ったところ(標高1320m辺り)で左へ尾根が分岐している。尾根の入口は鉄の棒にロープを張って通行止めにしてある。

 ロープの横を通って尾根へ入り、すぐに左の谷へ降って行く。谷はガラガラに崩れていて踏み跡はハッキリしないが、赤テープが所々に付いていて導いてくれる。所々に土止めの階段の跡が残っているので、かつてはここにちゃんとした登山道か作業道があったのだろう。谷は林道へ向かって真直ぐに降っているので、歩きやすいところを選んで降ればいいのだが、水流が現れたら右岸を降り、最後は左岸に渡って林道へ出る。

 この林道は内大臣林道の天主橋の手前から東内谷に沿って登り、その後天主山の南面を横切っている林道で、林道の入口には「北内谷林道」と書いてある。谷の名前は「東内谷」なのに、なんで「北内谷林道」なのだろうと不思議に思っていた林道だ。さっき、地元の車であろうか、軽トラが一台走っていたので、今でも使用されている林道のようである。

 小松神社への下降点は、林道を奥の方へ1km程行った所にある。途中で道路の中央にピンクのリボンを結んだ枯れ木が置いてあったので、これが目印かと思ったが、これは路面の陥没箇所を示す目印であった。下降点は、さらに100m程行った所で、まず、右側のケルンが目に入る。左側を見ると、そこにも小さなケルンがある。ここが小松神社への下降点である。雨は小降りになっていたが時間が押していたし、うまく見つけられるか不安だったので一安心である。

 小松神社へ降る道は今まで歩いて来た道とは様相が一変して、鬱蒼とした森の中を通っている。こんな雨の日には入っていくのを一瞬躊躇したくなるような雰囲気を醸し出している。しかし、中へ入ってみるとモミやツガ、杉の巨木が立ち並び、素晴らしい林相を呈している。倒れた巨木や岩は苔むして、幻想的で屋久島の「もののけ姫の森」を思い起こさせる。登山道には所々に赤テープと標識が取り付けてある。

 思ったより早く小松神社に到着した。小松神社は平清盛の嫡男、平重盛を祀った神社で林の中の高台に社がある。神社の下には「森の巨人たち100選」に選定された「小松神社御神木」の杉の木がある。小松神社は地図の鳥居のマークより等高線で80m程上の方にあるようだ。

 小松神社からは谷沿いに降って行く。今までとは一変して岩の多い、沢沿いの道で、足元に注意が必要だ。沢の左岸を降って行くが、今日は雨で水量が多く、迫力のある滝なども見られる。取水口設備の橋で右岸に渡って、斜面の踏み跡を辿ると小松神社入口に着く。

 今日も愛車RAV4が主人の帰りを忠実に待っていてくれた。帰りに「佐俣の湯」で4日間の垢を落として、松橋から3号線を通って福岡へ帰ったが、途中で事故現場に3回も出くわしてしまった。

(写真:北内谷林道から内大臣峡を望む)


あとがき

 今回歩いたコースは、私のようなマイカー登山を主とする者にとっては魅力的な縦走コースであるが、問題は水場が少ないことと、倒木や笹の多さである。特に水場は国見岳まで無いので食事を工夫して、水の使用を抑えた。逆コースも考えてみたが、馬子岳の急坂を最後に降るのがちょっと気になった。今回は天候にも恵まれず、新緑や花の季節にも少し早かったが、これらがうまくマッチすれば最高の山歩きが出来るコースだと思う。また、椎矢峠を基点とする高岳−国見岳間、および、三方山、天主山への登山道が木の枝や倒木で荒れてきている。内大臣林道が早く開通することを願う。

 なお、今回の計画を立てるに当たって、CJNさんの「CJNの九州低山そうつ記」、山海人さんの「山海人のアウトドアー」から情報を収集させていただきました。また、「九州の山 情報交換会議室」に投稿されたtokuoさんの情報も大変役立ちました。お礼申し上げます。

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