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内大臣林道から国見岳 (2005年11月19日〜11月20日) → 写真集


 国見岳登山口への林道が水害や台風で崩壊し、どのコースも登れなくなってしまった。特に内大臣林道からのルートは登れなくなってから2年近くになる。林道の復旧状況も気になるが、登山道が荒れてしまっていないか気がかりだ。今回、思い切って内大臣橋から歩いて広河原まで入り、杉の木谷コースと広河原コースを歩いてみることにした。

しかし、思いがけず広河原登山口まで車で入ることが出来て、一泊二日で登ることが出来た。


登山コース
広河原登山口−(崩壊地まで車移動)−杉の木谷登山口−(杉の木谷コース)−稜線−(高岳・国見岳縦走路)−山池湿原−(山池コース)−山池登山口−(門割林道)−長谷登山口−(長谷コース)−稜線−国見岳山頂−(広河原コース)−広河原登山口

内大臣林道MAP
登山道MAP

第1日目 2005年11月19日(土)晴れ

 いつものように小石原、日田、小国、阿蘇と車を走らせる。阿蘇は快晴で抜群の景色が広がる。草千里では観光客が気持ちよさそうに歩いている。空気が澄んでいるので遠くには雲仙普賢岳も見えてる。立ち寄りたいが、我慢して先を急ぐ。

南阿蘇グリーンロードを通って吉無田高原へ向かう。吉無田高原には吉無田水源があり、美味しい湧き水が豊富に流れている。ポリタンに水を満たして山都町の内大臣橋へ向かう。

内大臣橋は昔は朱色であったが、今は淡いブルーに塗り替えられている。橋を渡ったところにトイレ付きの駐車場がある。今日はここで車中泊して、明日、広河原まで歩き、キャンプする予定だ。

夕方まで時間があるので、林道の様子を見に少し歩いてみることにした。道路は駐車場のところで上下に別れる。下は「平家の湯」や「鮎の瀬大橋」方面へ向かう道で、上が内大臣林道への道だ。

上の道を300mほど行ったところで十字路になっている。右上は県道153線で美里町へ抜けていて、目丸山登山口へ行くにはこの道へ入る。左手前下へ降る道は内大臣橋から来た道と合流して「平家の湯」や「鮎の瀬大橋」へ向かう。内大臣林道は左前方へ向かっている道だ。入口にはいろんな立て札が立っていて、そのひとつに通行止めの立看板があった。横の空白に「路肩決壊のため、当分の間」、「※国見岳登山口へは行けません」と手書きで書いてある。ゲートで封鎖していると思っていたが、封鎖まではしていなかった。

足慣らしに林道を少し歩いてみることにする。工事を行っているのだろうか、路面にはトラックが通った跡が付いている。左下には緑川の流れと津留の集落が見える。遠くの谷間に「鮎の瀬大橋」が見えている。道路脇の山芋の蔓には大きなムカゴが沢山付いている。女房への土産に少し採っていくことにする。ムカゴは少しでも揺らすとすぐに落ちてしまう。傘があれば受けるのに良いのだが。。。

40分程歩いて2つ目のトンネルを抜けた辺りで引き返したが、熊本ナンバーの車が何台か林道を登って行くのにすれ違った。ドライバーの様子を見ると工事関係者の車のようではない。ひょっとしたら途中まで入れるのかもしれないと思い、引き返して車で林道を進んでみる。

途中で工事関係者らしい車と数台すれ違ったが特に咎められもしなかった。チッソの発電所の下で工事を行っているようだが、通行には差し支えない。

小松神社入口を過ぎて右へ西内谷林道が分岐している所で、チェーンが張ってあり通れなくなっていた。チェーンには鍵がしてある。さっき登っていった車は見当たらない。やはり、関係者だったのだろうと思い、ここら辺りで一泊して、明日、歩いて広河原へ入ろうと思っていると、車が一台降ってきた。
車には若い男性が3名乗っていて、一人がチェーンを外して出てくる。「椎葉から越えて来たのか」と尋ねると、「途中から降ってきた」とのことだ。どうやら山登りの帰りらしい。林道の様子を聞くと、登山口までは車でいけるとのことで鍵の番号を教えてくれた。

入っていいものやら、どうしようか迷っていると、熊本ナンバーの車が一台登ってきた。運転していた男性がチェーンを外し、私の方へやって来る。人のよさそうな男性で、仲間がこの先でキャンプしているのでそこまで行って登山口の様子を聞いてはどうかと話しかけてきた。先ほど登っていった車はこの男性の仲間らしい。「無断で入って大丈夫か」と不安を口にすると、「明日は日曜日だから工事は休みなので大丈夫だ」とのことだった。「それならば。。。」と男性の奨めに応じることにした。

1kmほど行って二本杉橋を渡った右側に広場があり「内大臣の名水 森林の湧水」と書いた看板が立っている。入口には車が4、5台止まっていてキャンプをしていた。チェーンを外してくれた男性が仲間に声をかけて登山口までの様子を聞いてくれた。一人の女性が先日行ったときの状況を教えてくれた。登山口までは何とか行けるとのことだったが、広河原は以前の面影はなく、キャンプには適さないようだ。一緒にここで泊まらないかと進められたが、人付き合いの下手な私が加わって場の空気を乱してもいけないので、お礼を言って辞退し、広河原まで行くことにした。

道路の所々に落石の痕跡はあるが広河原までは問題なく進むことが出来た。女性が言っていたとおり、広河原の様相は一変していた。川幅は広がり、川の縁の木や草もジャリで埋まっていた。上部には道路のコンクリートの壁が剥き出しになっている。とてもキャンプをしようと思える雰囲気ではない。とりあえず、登山口まで行ってみることにする。

広河原の上の橋を渡ったところは以前から道幅が広くなっていたが、工事を行っているのか、重機が何台か止まっていた。橋のところから谷の上部へ向かってピンクのリボンが付いている。おそらく、上の林道へ登る登山道だろう。

目丸林道分岐を過ぎた辺りから路面が荒れてきたが、広河原登山口までは何とか車で行くことが出来た。登山口辺りは昔と変わりなく少しホッとする。

今日はここで車中泊することにした。

(写真:内大臣橋)


第2日目 2005年11月20日(日)曇りのち晴れ

6:00 起床。
曇っていたせいか、予想してたより寒くはなかった。朝飯にカップラーメンを食べて、準備をしていると京都ナンバーの車が一台登ってきた。高年の男性と女性が降りてきて登山の準備を始めた。昨夜は平家の宿に泊まったらしく、昨日、林道を下調べに来て、やはり、下でキャンプしているグループの一人に鍵の番号を聞いて、ここまで来たようだ。各県の最高峰を登っているそうで、残っているのが熊本の国見岳、長崎の普賢岳、佐賀の経ヶ岳の3峰だと言うことだった。国見岳を登った後、フェリーで島原へ向かい、普賢岳に登るという。移動距離を考えるとどうかと思うが。。。

それならば、杉の木谷登山口から登った方が良いのではと進めると、杉の木谷コースのことは知らないらしく、案内を請われてしまった。結局、その人の車で杉の木谷登山口まで一緒に行くことになった。とにかく少しでも時間を短縮したいらしい。しかし、林道は途中で崩壊していて、杉の木谷登山口まで6分程歩くことになった。

7:07 杉の木谷登山口。
杉の木谷登山口の登り口は以前より少し手前になっていた。谷の右岸を2分ほど進んだ所から右の杉林へ入る。杉林の急登が続くが、道ははっきりしている。20分ほどで旧林道に出る。

7:30 旧林道出合い。
ここからはしばらく平坦な広い道が続く。初めてここを歩いたときは何処まで行くのか不安になったものだ。京都の2人もやはり同じように感じたようだ。

旧林道も1ヵ所くずれているところがあったが、何とか歩くことが出来た。12分ほど歩いたところで林道は終点になり、左の林へ登山道が登っている。

7:42 旧林道終点。
ここからは迷いそうなところもないので、2人とはここで別れて先に出発する。登りはじめからしばらくは左側に杉林があるが、やがて自然林へと変わって行く。鹿の食害だろうか笹は枯れてしまって葉はついていない。倒木は苔に覆われて自然に返ろうとしている。

すっかり葉を落として明るくなった樹林帯を、落ち葉を踏みしめながら登って行く。登山道は思ったよりもしっかりとして分かりやすい。やはり、地元の人は登っているのだろう。

葉のついた笹がまばらに現れると、東へ廻り込むように登る。葉の茂った笹の間を抜けると高岳からの縦走路に合流する。


8:27 縦走路。8:33発。
時間に余裕があるので高岳方面へ向かって「山池」湿原まで行って見ることにする。この道は、2年前に椎矢峠から国見岳まで往復した時に通ったことがある。「山池」湿原辺りは雰囲気の良い樹林が広がっている。

以前はそれほど苦にならなかった道だが、歩く人が少ないせいか、登山道は全体的に不明瞭で、落ち葉が積もったこの時期は特に判別しにくくなっている。特に、倒木を迂回した後などに登山道を見失いやすい。しかし、尾根道は明るくて、所々にブナの巨木も見られる。なだらかなピークを左へ巻いて、左の林に大きな2つの岩が見えてくると5分ほどで「山池」湿原に着く。


9:05 「山池」湿原。9:40発。
「山池」湿原は2つのピーク(東側のピークは地図上で1575mの地点)の鞍部にある平坦な窪地の樹林帯である。樹林の中央付近に小さな池があるが、この日は水はなくて、僅かに湿っている程度だった。

高岳への縦走路は東へ向かっているが、南の方へも門割林道へ降る道がついていて、門割林道まで20分で降れると標識に書いてある。また、また、ほっつき歩きの虫が蠢き出す。たしか、門割林道には長谷登山口があって「力水」の近くへ登る登山道があるはずだ。いつか歩きたいと思っていたので門割林道へ降って長谷コースを歩いてみることにした。

しばらく辺りを散策してから、南の縁を越えて門割林道へ降る。南側の尾根の林の中には、鹿の寝床だろうか、所々丸く土が剥き出しになっている箇所がある。門割林道へは谷を降って行くが、かなり荒れていて道も不明瞭である。とにかく谷を外さないように降っていくと20分程で門割林道へ降り着く。


10:02 山池登山口。
降りついた所は谷を林道が横切るところで「山池登山口」の標識がある。門割林道は南側が開けた明るい林道であるが、ここまで車で入ることは出来ないのだろう、車が通った形跡はない。林道を西へ進む。10分程進んだところで右の斜面が崩壊して林道を塞いでいる。崩壊地を横切って土砂で埋まりかけた堀切を過ぎると正面に国見岳が見えてくる。山腹は緑の植林帯と灰色に煙る自然林がはっきりとした模様を描いている。

国見岳山頂の真下辺りの林道にワゴン車が見える。こちら側からは行けないので向う側から入る道があるのか不思議に思ってそこまで行ってみることにする。

堀切を抜けて谷の一番奥まった所に長谷登山口の標識があった。登山道は渓流沿いに谷を登っているようだ。

10:20 長谷登山口。10:35発。
登山口にザックを置いて先ほど見えたワゴン車のところまで行ってみる。若い頃、推理小説を読みすぎたせいか、なかで人が死んでいたらどうしようかなどと考えてしまう。

ワゴン車は林道脇の広場に止まっていた。ナンバープレートが取り外されているので廃車のようだ。車の中は後部座席のシートが外されていて綺麗に片付けられていた。インスタントコーヒーの瓶が置いてあるし、箒もある。助手席にはシャツが置いてあった。多分、小屋代わりに使っているのだろう。

気がかりが解決したので登山口まで引き返して谷へ入って行く。このコースは初めてなので慎重に目印を辿る。はじめの方は渓流になっていて、山女だろうか、魚の姿も見え隠れする。水量が少なくなり、ガレ場が多くなると谷も広がってなだらかになる。踏み跡ははっきりせず、目印も少なくなってきた。谷が二俣になっているところは迷いやすいところだ。しっかりとルートファインディングをして目印を探す。

最後は谷からそれて左の方へ斜面を登って行くと、杉の木谷や高岳から登ってきた登山道に合流する。


11:50 縦走路。
縦走路へ合流してすぐに「力水」に着く。「力水」は国見岳山頂に一番近い水場であるが、この日は水量が少なく、パイプからチョロチョロと流れているだけだった。

「力水」を過ぎると広い樹林帯を登って行く。下草がなく樹々の間は落ち葉で埋め尽くされている。途中にはシナノキの大木もある。石楠花の木が多くなってくると右から広河原・平家山方面からの登山道が合流する。


12:05 広河原・平家山方面分岐。
この分岐には、以前は標識があったが、今は文字が消えてしまった白いプレートが一枚落ちているだけだ。

すぐに山頂の祠が見える肩に出る。山頂に人影が見える。先客がいるようだ。山頂直下の岩場を登ると国見岳山頂に着く。


12:10 国見岳山頂。13:20発。
国見岳山頂はいつもと変わった様子はなく、祠もしっかりと建っていた。山頂には男性の登山者が3人いて、私が内大臣林道側から登ってきたので不思議そうに話しかけてきた。内大臣林道の様子を話してやると納得した様子で、自分達は椎葉から五勇山経由で登って来たのだと言った。彼らの話では椎葉の村内の道路は問題なく通れるらしい。しかし、椎矢峠や五家荘方面への道路は通行止めのままだそうだ。記念写真を撮るとそそくさと引き返していった。

3人が去ると山頂は独り占めになってしまった。まずは展望を楽しむ。今日は空気が澄んでいるので遠くまで良く見える。阿蘇や祖母山系の山々はもちろん、西の方には雲仙まで見えている。写真を撮りながら、南側の岩場で昼飯にする。風が当たらないせいか暖かい。

昼飯を済ませ、もう一度展望を楽しんでから下山にかかる。

降りは広河原コースを降ることにする。広河原コースは山頂直下で杉の木谷・高岳方面への登山道と分かれて、途中までは尾根を挟んで反対側を進み、やがて北へ向かう尾根を降って行く。この尾根は平家山、京丈山、雁俣山と続く尾根で尾根上を縦走路が通っている。大きなイチイの木を過ぎると笹が濃くなってやがて広河原への分岐に着く。


13:50 広河原分岐。
広河原コースは1550m付近で縦走路から別れて尾根の東側斜面をトラバース気味に降って行く。このコースは幾つかの谷を横切っている。最初の方は谷も浅くて問題なく横切って行くが、次第に谷が深くなり、崩れやすい急斜面を降るところもある。

トラバースが終わると今度はひたすら尾根道を降り、やがて杉林の道となる。途中、左が崩壊しているところで北側の展望が得られ、もう少し降った所からは右側に高岳や天主山方面の展望が得られる。杉林を降るとやがて広河原登山口に降りつく。

15:23 広河原登山口。
登山口には愛車RAV4が待っていた。


広河原登山口から林道を降り、チェーンを開けて出ようとしたが、鍵が開かない。教えてもらった番号に間違いはなかった筈だが。。。

番号が秘密の場所に書いてあるのでそこを見てみたが間違いない。焦ってガチャガチャやっているうちに手ごたえがあり、カチャッと開いた。ラッキーである。もし開かなかったら、明日、工事の人がやってくるまでここで待つことになる。食料は充分あるので問題ないが、全く冷や汗ものだ。やはり、ルール違反をしてはいけないということか。。。。

ホッとして、チェーンを元に戻して出発する。

(写真:国見岳山頂)


あとがき

 今回は内大臣橋から歩き、広河原でキャンプして、翌日、登山する予定であったが、思いがけず広河原登山口まで車で入ることが出来た。林道とコース状況をまとめてみた。


内大臣林道は、小松神社入口の先の西内谷林道が右へ分岐しているところで通行止めになっている。チッソの発電所下辺りと広河原上部で工事を行っているようだ。広河原登山口までは車で走っても大丈夫な路面状況だが、広河原から広河原登山口までは路面が荒れている所があるので普通車だと底をこするかもしれない。広河原登山口から先は、1km程のところで崩壊していて車では進めない。崩壊箇所から杉の木谷登山口まで歩いて10分程かかる。

杉の木谷コースは旧林道が1ヵ所崩壊しているが、他は特に荒れた様子はなかった。登山道への入口が以前よりは少し手前になっていた。

広河原コースは谷を横切るところが何ヶ所か崩れやすくなっていたが、ほぼ問題なく歩けた。山頂直下の分岐点の標識がなくなっていた。

稜線へ出てから山池湿原までは、踏み跡が薄くて落ち葉で隠れているため登山道が分かりづらい。

山池湿原から山池登山口(門割林道)は荒れた谷を降る。登山道は不明瞭であるが谷を外さなければ20分程で林道へ降れる。山池登山口には標識がある。

門割林道は山池登山口から長谷登山口まで歩いたが、途中崩壊箇所があった。しかし、歩く分には支障はない。

長谷コースは前半は渓流、後半は広い樹林帯のコースである。初めて登ったが、渓流には魚の影も見られ、なかなかいいコースだった。しかし、踏み跡が薄く、目印がまばらなのでしっかりとしたルートファインディングが要求される。また、登山口までのアプローチが難点だろう。。。
こちらも登山口には標識がある。


ひとつ残念だったのは、広河原の景色が一変して以前の面影がなくなっていたことだ。それでも九州脊梁山地の盟主国見岳はやはりいい山である。登山口までの林道が早く開放されることを願う。

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