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英彦山北西尾根(2007年3月26日) → 写真集


 久しぶりに山のWebサイトを見ていたら、MORIさんのホームページ「鈴鹿の風に吹き飛ばされて・九州へ!」で英彦山北西尾根の山行記録を見つけた。笹原に立ち並ぶ白骨林の写真がとてもステキだ。以前にも山旅人さんのサイトでこのコースの記録を見たことがあり、いつか登りたいと思っていた。早速、情報収集してカシミールでルートを確認する。

問題は取り付き地点が分かるかだ。英彦山野営場のバンガローの横を登って行く階段が入口になっているようであるが、キャンプ場内は道が入り組んでいそうで、方向音痴の私に無事見つけられるかどうか不安である。また、登山道はあまり踏まれていないようなので迷うこともありうるので、地図とコンパスを携帯することにする。


登山コース

英彦山野営場(9:05) − (9:30)観察路十字路 − (11:00)英彦山中岳(11:30) − (11:40)南岳 − (12:25)鬼杉(12:35) − (12:40)大南神社・昼食(13:25) − (13:45)梵字岩(13:45) − (14:10)虚空蔵(14:35) − (14:50)奉幣殿(15:00) − (15:20)英彦山野営場

MAP

英彦山野営場から中岳山頂まで
 英彦山野営場 → 観察路十字路 → 英彦山中岳山頂

 出発地点を何処にするか迷ったが、結局、キャンプ場まで車で行くことにした。
9:00ちょうど、英彦山野営場の駐車場に到着。準備を整えて出発する。舗装された道を登って行くとすぐに左右へ分岐する。山旅人さんのサイトに「豊前坊側のバンガローが建ち並んでいるところ」とあったので左へ進むと、写真で見た通りの場所に辿り着いた。右へ階段が登っていて、階段の右側にバンガローが建ち並んでいる。ここが、北西尾根への入口である。

階段は結構長くて、5分程登ったところで終わっている。階段の終点からは正面の林の中へ踏み跡が続いている。結構、急坂だが、冬枯れの自然林の尾根道は明るくて気持ちがいい。途中の野鳥観察小屋を過ぎると10分程で野鳥観察路に出会う。ここには道標が立っていて、左右へ観察路、登って来た方へ野鳥観察舎入口の表示がある。登山道は観察路を横切って右斜め上へ登って行くが、そちらの方へは何の表示もない。このルートは整備された登山道ではないようだ。

観察路十字路を過ぎると踏み跡は薄くなり、土も緩んでいて崩れやすい。所々、赤いテープがついているが、踏み跡を見失わないように神経を集中する。観察路十字路から15分くらい登ると広い尾根上にでる。葉を落とした木々の間に露岩が幾つか散らばっていて、脊梁山地の山々を思い起こさせる景色だ。尾根の反対側(北側)には青年の家が見える。登山道は尾根の南側を通っていて、次第に南へ方向を変えて行く。何の木か分からないが、巨木の右側を通って行くと、ブナが目立つようになる。左の尾根上にはブナの巨木が枝を広げて立っている。

笹が現れたところで登山道が分からなくなってしまった。おそらく笹の中へ入って行くのであろうが、それらしき踏み跡がない。おそらくこの方向であろうと思われるところにブナの倒木が枝を広げて横たわっている。この倒木が踏み跡を隠したのであろうと検討をつけて、倒木を越えて進むと先の方に紫色のリボンが見えた。この辺りからは所々にブナの巨木が倒れている。少し行ったところでも倒木が道を塞いでいて左の笹の中を迂回して進む箇所があった。老いて弱くなっているところを強風に曝されたのであろう、根っこから倒れているのではなく、幹の途中からポッキリと折れている。

次第に笹が濃くなってきて、ヤブコギ状態になって来た。背丈より高い笹の間を登って行くと左が谷になっているところに出る。ここからも笹の道が続く。途中で右へ踏み跡を分けて直進すると左前方に断崖が見えてくる。絶壁の下の方には岩が抜けたような窪みがある。絶壁の右側の溝の所にロープが下がっていて、ここから上へ登るようだ。頭上の岩は薄い岩が積み重なっていて、今にも崩れそうで緊張する。右側の岩にホールドとステップを見つけて何とか上へ出る。岩の上からは今日登ってきた尾根が見下ろせる。また、東の方には英彦山北岳と鷹ノ巣山の特徴ある姿も見えている。

背丈が低くなった笹の中を進んで行くと5分程で林の縁にでる。前方には一面の笹の原が広がり、その中に、点々と白骨林が立っている。そして、その先には見覚えのある社が2棟並んで逆光に黒い影を見せている。ブナ林が衰退してクマザサが蔓延ったのであろうから、喜ぶべき景色ではないのであろうが、つい、何枚も写真を撮ってしまう。

道は笹原の中に確かについているが、足元は全く見えない。写真を撮っては先へ進み、また、立ち止まっては写真を撮るといった状況で、なかなか先へ進まない。
途中、何ヶ所か右の方へ分岐らしい踏み跡があったが、左へ、左へと山頂を目指して進んで行く。しかし、最後の最後で踏み跡を見失い、笹原の中で立ち往生してしまった。上宮の社を目指して進んできたので、いつの間にか右へ踏み込んでしまったようだ。MORIさんのホームページの写真では山頂広場へ出ていたようであったのを思い出して、左へ軌道修正して笹を掻き分けて行くと、すぐに笹が切れたところに出た。そこから山頂へ向かって踏み跡が続いていて、前方に小屋の屋根が見えている。小屋の横を抜けるとすぐに英彦山中岳の山頂広場に到着した。出口には柵がしてあって立ち入り禁止の表示がしてあったが、後の祭りである。

山頂広場には誰もいない。上宮の方と北岳の方から人声が聞こえてくるがこちらへ近付いてくる気配はない。時刻は11時。昼飯にはちょっと早いのでミニアンパンで腹の虫をごまかして、記念写真を撮る。下山コースをどうするか思案しながら20分程休憩して広場を後にする。結局、南岳から鬼杉へ降り、大南神社から奉幣殿へ向かうことにした。

上宮にお参りして南岳へ向かう。上宮の社は永年風雨に曝され、あちこちと痛んでいる。以前、神社の関係者が県の文化財に申請するようなことを言っていたがその後どうなったのであろうか、気になるところだ。英彦山の歴史を考えると、もっと手厚い保護をすべきだと思う。奉幣殿よりも上宮のほうが神様に近いのだろうから。。。
それにしても、社の板に落書きがしてあるのに驚いてしまった。本当に情けない限りである!!!

(写真:英彦山中岳の笹原と白骨林)


中岳山頂から鬼杉・大南神社まで
 中岳山頂 → 南岳山頂 → 鬼杉 → 大南神社

 日本人のモラルの低さを嘆きながら南岳山頂に到着する。南岳は英彦山三峰の中で一番標高が高く(1199.6m)三角点が設置してある。三角点の手前には英彦山大権現の祠と展望台がある。今日は少し霞んでいるので展望台はパスして、降りにかかる。

南岳からの降りは道がかなり荒れていて、赤茶けた地肌は崩れやすく、濡れると滑りやすい。鎖を張った岩場を降って行くと左へ道が分岐している。これは南岳山頂の東側を巻いて中岳との鞍部に出る迂回路である。

さらに降って行くと、長い鎖場がある。この辺りからは南側の展望が得られ、岳滅鬼山を主峰とする県境尾根が一望できる。また、右側には障子ヶ岳の大きな山塊が見えている。鎖場を過ぎて再び林の中の路を降って行くと、展望の良い露岩の上に出る。ここは材木岩の上の方で、ここから左へ巻き気味に降って行くと登山道の右側に柱状摂理の材木岩ある。

材木岩から5分程の降りで十字路に出る。右は大南神社・奉幣殿への道である。直進が鬼杉へ降る道であるが、水害の影響で倒木が道を塞いでいて今は通れない。鬼杉へは大南神社経由で降って行くことになる。左は籠水峠への道で、裏英彦山道県境尾根コースを歩くときはこちらの道へ入る。今日は右の大南神社への道へ入る。少し降ると南へ延びる細い岩尾根を乗り越える。乗り越えたところで右へ三呼峠を経て奉幣殿へ向かう道が分岐する。今日は一旦、大南神社を経て鬼杉へ降り、ここまで引き返して奉幣殿へ向かうつもりだ。岩尾根の西側につけられた桟道からもう一度岩尾根を越えて再び東側へ降ると岩の突端に大南神社の案内板がある。大南神社の社は右側の岩の下にはめ込まれたように建っている。玉屋神社とともに英彦山らしい風景のひとつである。

大南神社から降って本来の登山道に合流し、沢沿いの道を降って行くとすぐに鬼杉に到着する。鬼杉は福岡県で最も大きな杉の木で樹齢1200年になるそうだ。空へ向かって真直ぐに伸びた幹は、辺りの杉の木とは違ってゴツゴツとして風格がある。屋久杉にも引けをとらない大樹である。柵を作っているのか幹の周りでは工事を行っていた、くれぐれも木を傷つけないようにして欲しいと願う。

鬼杉から玉屋神社を経由して奉幣殿へ向かう道もあるが、距離が長いのでやはり、三呼峠経由で行くことにする。昼食がまだだったので、引き返して大南神社の上の岩場で昼飯にする。

(写真:大南神社)


大南神社から奉幣殿を経て野営場まで
 大南神社 → 三呼峠 → 衣ガ池 → 梵字岩 → 虚空蔵 → 奉幣殿 → 英彦山野営場

 昼飯を終えてから奉幣殿へ向かう道に入る。5分程で道標が立っている小尾根を越える。道標には「三呼峠」と書いてある。名前は聞いたことがあるが、何処だか分からないでいた峠だ。三呼峠を越えると、登山道は杉の人工林の中をどんどん降って行く。降りきって少し行くと、また、道標があり、左へ四王寺谷の表示がある。四王寺谷が何処かは分からないが、おそらく玉屋神社辺りへ降る道であろう。

すぐに登山道脇に小さな池が現れる。池の周りには苔むした岩が並べてあり、どう見ても人工的なものである。木の根元に錆びた鉄板の標識が掛かっていて「衣ガ池」と書いてある。下の方に説明書きがあるが、錆びてよく読めないが、「弘法大師がが衣を洗った池で、付近のせせらぎが枯れてもこの池は枯れず、凍らない」といったようなことを書いてあるようだ。

沢を横切って奇岩の下を通って行くと小尾根を越えるところにも道標があり、道標の根元に「玉屋見口」と書いた看板が落ちている。また、道標の柱の横に梵字岩展望台と書いてあり、矢印が西の尾根の方を差している。確かに、尾根へ踏み跡がついているので少し入ってみる。北側の斜面に岩肌が覗いているが、果たして梵字岩かどうかは分からない。それに展望台はもっと先の方らしいので、あきらめて登山道へ戻る。

2、3分進むと、今度は右側に鳥居が建っていて、階段が登っている。鳥居の上には「
智室社」と書いてある。鳥居の下には「梵字岩」と書いた標識が幾つかあり、木で作った案内板も立っている。どうやら階段を登って行くと三つの大きな円の中に「大日如来」、「釈迦如来」、「阿弥陀如来」の梵字を書いた岩があるらしい。ちょっと疲れてきていたのでどうしようか迷ったが、世界最大の梵字と書いてあるし、めったに通る道ではないので立ち寄ることにした。階段を3、4分登ると注連縄を張った赤い壁の小さな小屋があり「智室社」と書いてある。中を覗くと注連縄を張った大きな石が祀られている。左上は岩壁になっていて、その岩壁に三つの丸い梵字が並んでいる。なるほど大きい梵字である。しかし、弘法大師が彫ったものにしてはハッキリとしているようだが。。。
この近くに「天狗ノ鼻」という岩場があるそうだが、残念ながらそれを知ったのは帰ってからであった。

梵字岩から登山道へ戻り、先へ進むと、今度は左下の杉林の中に墓石のようなものが4つ並んでいるのが見える。ちょっと覗いてみると「享保・・」の文字が読めるので江戸時代初期のもののようだ。良く見ると、ここ以外にもあちこちに同じような墓石?がある。登山道へ戻るとすぐに玉屋神社からの道が合流する。この辺りの林の中にも墓地のようなものが見える。この辺りは古い墓地だったのかもしれない。

さらに進むと、今度は右に石垣があり、石垣の間を階段が登っている。石垣の上には小屋が建っている。階段の入口に標識が立っていて、階段の方へ虚空蔵100mの表示がある。近そうなので行って見ると、これがなかなか急な階段で最後の方は崩れて階段の形を留めていない。最初に見た小屋はお堂ではなくて観察小屋で、虚空蔵ははるか上の方にあるのだ。道標に書いてあった100mの表記も疑わしい。左上にもうひとつ小屋の屋根が見えてくると、やっと広場にたどり着く。

左手の岩の下に大きな窟があり、何か祀ってある。おそらく、虚空蔵なのであろう。その手前には観察小屋があり、中にはベンチとテーブルが設置してある。観察小屋というよりは休憩所のようだ。観察小屋の左向うには宝塔が立っているのが見える。広場の右側には大きな石碑があり、岩に小さな板碑のようなものが数個立てかけてある。さらに向こう側には岩のしたの窪みに仏像が祀ってある。辺りは奇岩が多く、なんとも興味をそそられる場所だ。宝満山もそうであるが、信仰の山は山頂や山麓だけでなく、山腹にもいたるところに歴史の痕跡が残っていて興味深い。疲れた足に鞭打って登ってきた甲斐があったと感慨にふけりながら登山道へ降る。この辺りは石垣が多くみうけられるので、昔は坊や御堂が建ち並んでいたのではなかろうか。。。

虚空蔵を後にすると小渓を渡る所に道標があり、左へ「学問神社」の表示がある。これもまた、初めて聞く名前である。さらに進むと今度は「九大生物研究所」への道が降っている。この道は先の方で奉幣殿の参道の階段へ出るようだ。奉幣殿への道は、ここで北へ方向を変える。途中、右上の方に水源があるらしく、いくつものパイプが降ってきている。おそらく奉幣殿の御神水もここから引いたものではないだろうか。登山道は最後に、奉幣殿のすぐ上で中宮経由で降ってきたメインルートに合流する。

平日の為か、参拝者は家族連れが一組だけであった。上宮に御参りしてきたので、ここは割愛して、社務所横の御神水を水筒に満たしてから奉幣殿の裏側へ廻り、修験道館の方へ向かう。奉幣殿にあった案内板によると修験道館から車道を通らずにキャンプ場へ行けそうであったが、不安があったので車道を通って行くことにした。

修験道館から車道へ向かう途中には「伽藍さま」、「三日月池」などがあり、「三日月池」の先でR500に合流する。R500を右へ5分程歩くと野営場の駐車場に着く。

(写真:梵字岩)


あとがき

 今日は久しぶりに英彦山を歩いた。本来の目的は宝珠山の岩屋駅で水を汲むことであったが、せっかくなので英彦山に登ることにした。今回歩いた北西尾根は豊かな自然林のコースでブナの巨木も見ることが出来る。前半は急登、中盤は豊かな自然林、後半は笹漕ぎと変化に富んでいて、疲れを感じさせない。特に最後の笹原の景色は感動的で、点在する白骨林が美しい景色を作っている。

正式な登山道ではないのであまり勧めてはいけないのだろうが。。。



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