福岡県糟屋郡久山町と宮若市を結ぶ県道21号線は両市町の境にある峠を新犬鳴トンネルで越えますが、この峠は犬鳴峠と呼ばれています。新犬鳴トンネルの上には(旧)犬鳴隧道があり、かつては旧県道21号線が通っていました。しかし、現在は犬鳴隧道の入口はコンクリートブロックで封鎖されて通り抜け出来なくなってしまいました。また、犬鳴隧道へ通じる旧道にはゲートが設けられて車は通れなくなっています。

犬鳴峠は、近年、心霊スポットとして騒がれていますが、これはおそらく「犬鳴」という変わった地名と犬鳴隧道が封鎖され訪れる人が少なくなったことによるものと思われます。また、犬鳴峠の東側には犬鳴ダムがあり、このダム湖に沈んだ集落があることも噂の一因になっているかもしれません。時々、心霊マニアらしい若者達が歩いているのを見かけます。以前はトンネルの入口付近にはゴミが散乱していましたが、最近は綺麗に片付けられています。

犬鳴峠の北側と南側には豊かな山林が広がっていて結構山深いところで、登山の対象になる山も幾つかあります。名が知れている山では西山や犬鳴山がありますが、その他にも遠見岳、鉾立山、大目配などは近郊の登山者には良く登られている山です。ここでは、犬鳴峠を中心とする山域の山々とそこへ登るコースを紹介します。

  1.犬鳴ダムを取り巻く山域
  2.猪野ダム北部の山域
  3.遠見岳
  4.犬鳴峠を中心とする山域
  5.猫峠を中心とする山域

※司書口コース、日原炭焼口コースは昨冬の大雪による倒木が多く通行困難な状況だそうです。司書口コースの代わりに同コースの西側の尾根沿いに登る仮設コースが切り開かれているそうなのでそちらを利用してください。Green Walk27夏号に詳細が載っています。
1.犬鳴ダムを取り巻く山域 ⇒ コース説明 TOP
 犬鳴峠の東側には犬鳴ダムがあります。このダムは「司書ダム」と言う別名を持ち、ダム湖は司書の湖と呼ばれています。これは江戸時代末期、この地に鉄山を開いたり、有事に藩主を匿うために犬鳴御別館を作った福岡藩家老職の加藤司書にちなんで名付けられたものです。この湖の奥の丘の上には今も犬鳴御別館跡の石垣が残っています。また、県道21号線がこのダムの東側の谷を渡るところには犬鳴大橋が架かっています。この橋を渡って宮若市側へ2.5km程降ったところには脇田温泉があります。

この司書の湖を逆U字型に取り巻く尾根には北に一等三角点の山、西山(別名:鮎坂山、標高664.6m)が、南に犬鳴山(別名:熊ヶ城、標高583.7m)があり、多くの登山者に登られています。また、この尾根上には、辰ノヘラこもの峠番兵跡鹿見岐れ猪野岐れなど昔を偲ばせる地名が残っていて、これらを巡るように登山道が通っています。山深く、自然豊かなところで、照葉樹林の尾根には鹿やイノシシの痕跡があちこちで見られます。

この山域への登山口は、宮若市側の司書口、日原炭焼口、犬鳴口、脇田温泉口、清水口、古賀市側のイノニタ口、本谷口、小野谷口などがあります。また、久山町の猪野地区からも林道や作業道を経由して登ることが出来ます。また、最近ではダム湖右岸の周回道路から直接犬鳴山へ登るダムコースや、ダム湖左岸のタタラ谷から大平林道へ登り西山へと縦走するタタラ谷コースなども新設され、交通量の多い県道21号線をあるかないでも縦走できるようになりました。
司書の湖(犬鳴ダム) 西山(鮎坂山)山頂 犬鳴山(熊ヶ城)



2.猪野ダム北部の山域 ⇒ コース説明 TOP
 糟屋郡久山町の猪野地区には伊野天照皇大神宮がありますが、この神宮の北部の谷間には猪野ダムがあり、ダム湖の北側に古賀市と久山町の境界をなす尾根が北東から南西へと延びています。この尾根上には戦国時代に立花城から菰野へ密使が駆け抜けた道が通っていたそうです。現在は立花古道と名付けられ、縦走路として利用されています。

この山域のメインは大目配(おおめくばり、別名:スバイ山)という標高409.7mの四等三角点の山です。大目配はかつて神功皇后がこの山から朝鮮半島を眺められたという由緒正しい山ですが、今は山頂付近まで植林され展望は利きません。
また、この尾根上には大目配の他にも奥見立(263.1m)、久山(510.8m)などのピークがあり、谷山越薬王寺峠白木越などの峠を古賀市と久山町を結ぶ山道が越えています。尾根の北側には薬王寺温泉や古賀ダムなどがあり、この山域への登山口となっています。
猪野ダム 白木越 河内池と大目配



3.遠見岳 ⇒ コース説明 TOP
 遠見岳は糟屋郡久山町猪野の北部にある標高322.9mの低山です。神功皇后が三韓出兵の前に戦勝を祈念された時、この山頂から朝鮮半島の方向を見渡して戦略を練られたといわれています。遠見岳の南山麓には伊野天照皇大神宮があり、遠見岳への正面登山口になっています。
また、北東には猪野ダムがあり、猪野ダムから小河内トンネルへ向かう道路からも林道経由で登ることができ、こちら側は裏登山口になっています。山頂には東屋があり、北西の展望(海の中道、志賀島、博多湾、能古島など)が得られます。
伊野天照皇大神宮の参道 遠見岳山頂



4.犬鳴峠を中心とする山域 ⇒ コース説明 TOP
 犬鳴峠は県道21号線が久山町と宮若市の境を越えるところで、現在は新犬鳴トンネルが通っています。新犬鳴トンネルの上には犬鳴隧道があり、かつては旧県道21号線がこの隧道を通って新犬鳴トンネルの両側の入口の近くに降っていました。しかし、現在は犬鳴隧道は封鎖されて通り抜けることは出来ず、旧道もゲートが設けられて車は通れなくなっています。

最近、犬鳴隧道の上を越えて久山町と宮若市を繋ぐ峠道が整備され、この峠には古犬鳴峠という名が付けられました。この峠は北の猪野岐れ近くから南の柳原越まで延びる尾根の途中にあり、峠から北を北犬鳴尾根、峠から南を南犬鳴尾根と呼んでいます。広葉樹林と植林帯が入り混じるこれらの尾根からは多くの枝尾根が派生し、植林帯には杣道が巡っています。最近、地元の人たちによってこれらの尾根上に登山道が開拓されました。

また、柳原越から猫峠へ延びる尾根は柳原猫尾根と呼ばれ、この尾根上にも杣道を繋いだ縦走路が通っています。柳原猫尾根はほとんどが植林帯で、尾根道にはオフロードバイクの通った跡が深い溝を作っているところもあります。この尾根の途中からは南西へ三ツ頭山方面へ向かう尾根が、また、北東へはどんどんへ向かう尾根が分岐していて、これらの尾根上にも登山道が通っています。

南犬鳴尾根を挟んで西側と東側には車道が通っています。南側の車道は旧県道21号線のゲートの手前から分岐して柳原地区まで延びていて、柳原地区の人々の生活道路として使われています。一方、東側の道路は犬鳴隧道入口の前で旧道から分岐して尾根の近くまで延びています。この車道の途中からは左へ2本の道路が分岐しています。最初の道路の終点にはビニールハウスが建ち並び、その奥には民家があります。おそらくこの民家に住む人が旧道入口のゲートを出入りしているのでしょう。2本目の道路は草が生茂っていて最後は藪になっています。入口には「福岡県護国神社林道犬鳴山・・」の標石が立っていて、途中の林の中には「護国神社御用林」の標石が立っています。

この車道の途中の林の中には民家があり、人が住んでいるようです。また、終点付近には畑があり、ビニールハウスが幾つか並んでいて、今も野菜を栽培しています。車道の終点は以前は藪に突き当たっていましたが、最近行ってみたら終点から林の中へ作業道が延びていました。この作業道はしばらく行ったところで二俣になり、直進すると送電鉄塔へ辿りつきます。送電鉄塔工事のために最近舗装したようです。
また、この車道の途中からは柳原越を越えて久山町の柳原地区へ抜ける道が分岐しています。

なお、上記の畑がある地区は犬鳴開拓と呼ばれているようです。犬鳴開拓の東側にはどんどんという標高624mのボリュームのある山があります。どんどんはほとんどが植林で覆われていますが、北側にはまだ自然林が残っています。しかし、その一部は送電鉄塔の建設のために伐採されてしまいました。この山塊に建てられた送電鉄塔は全部で4つあり、これらを結ぶ点検路を辿って新犬鳴トンネルの宮若市側入口からどんどんへ登ることもできます。

また、どんどんと谷を隔てて東側には間夫という標高598.8mの三頭三角点の山があり、2つの山の間を緑山から脇田へ車道が降っています。
旧県道21号線入口 犬鳴隧道 古犬鳴峠



5.猫峠を中心とする山域 ⇒ コース説明 TOP
 福岡県糟屋郡篠栗町と宮若市を結ぶ県道92号線が両市町の境界を越える峠が猫峠です。県道92号線の北側を猫峠から西へ延びる尾根は久山町と篠栗町の町界をなしていて、この尾根上には三ツ頭山(553.2m)があります。また、県道92号線の東側には篠栗町と宮若市の境界の尾根上に鉾立山(663.2m)や畝原山(667m)があります。猫峠の東側には菅岳(682m)も丸みを帯びた姿を見せています。また、北側にはどんどん(624m)や間夫(508.8m)という変わった名前の山もあります。

猫峠の西側の篠栗町側の道路沿いにはお寺やお堂が多く見られます。篠栗町は「篠栗四国霊場八十八ヶ所」で有名なところで、巡礼に訪れる人たちが遍路道を歩いている姿をよく見かけます。ほとんどの人が16番札所の呑山観音寺を目指しているようです。県道沿いには遊歩道を兼ねた遍路道が通っています。

また、途中には「樹芸の森」という自然公園があり、休日にはハイキングをしたり、道路を挟んで反対側にある「鳴淵ダム展望公園」でバーベキューをしたりする人が多く訪れます。「樹芸の森」の南側には「鳴淵ダム」があります。樹芸の森から1km程行った所から鳴淵ダムへ降り、国道201号線に出る道路が分岐しています。

一方、猫峠の東側の宮若市側では狭い谷間に田畑を作り、農業が営まれています。道路脇には竹炭工房等もあります。緑畑地区からは間夫峠を越えて脇田温泉へ降る車道が分岐してます。県道92号線をそのまま降るとT字路になっていて、右へ行くと八木山へ左は力丸ダム方面へ行くことが出来ます。

この界隈は山登りだけでなく、遍路道を利用しながら里山歩きを楽しむのも良いでしょう。
樹芸の森の展望台 どんどん 菅岳
鉾立山と畝原山


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